今週の見通し

 先週の上海総合指数の下落の主因は、先述のとおり、全人代で経済成長の目標が示されないことが明らかになったことだと考えられます。15日(金)の終値が2,868.45ポイント、21日(木)2,867.92ポイントであったことから、全人代の初日の5月22日(金)の前日までは、ほぼ横ばいで推移していたことがわかります。

 しかし、全人代の初日(開催期間は28日まで 例年は2週間程度開催)、上海総合指数は下落し、22日(金)の終値は2,813.76ポイントとなりました。この結果、1.9%の下落となりました。

「予測困難な事態に直面しているため、経済成長目標を提示しない」としたわけですが、予測が困難な理由は、中国と深いつながりがある国々で新型コロナウイルスの感染拡大が起きていること、そして、感染拡大を機に米国との関係が悪化し始めたことなど、拡大中のマイナスの要素が複数あるためだと考えられます。

“一帯一路”政策を推し進める上で、中国が強い影響力を及ぼしてきたアジア諸国や一部の中東諸国、そしてインフラ投資を拡大させてきたアフリカ諸国では、新型コロナウイルスの感染拡大が起きています。

 人々の活動を制限しなければ感染拡大をとめることが難しい(お金で感染拡大防止を買うことはできない)ため、貿易上、そして世界の覇権争いにおいて、中国が重要と考える国々で感染拡大がとまらないことは、非常に、中国にとって頭の痛い問題と言えそうです。

 また、台湾で対米重視の蔡英文総統の2期目続投が決まったこと、全人代で香港での国家安全法が審議入りしたことで香港からの反発が予想されることオーストラリアとの貿易において、関税の引き上げ合戦の色が濃くなっていることなど、中国をとりまく環境は、新型コロナウイルス起因の要素以外でも、悪化していると言えそうです。

 中国は他国に比べ、新型コロナウイルスの感染拡大が早期に落ち着き、同ウイルスによって大きなダメージを受けている世界全体の経済の回復をけん引してくれる存在として、期待の目が向けられていますが、足元の状況を考えれば、そう簡単にはいかないのかもしれません。

 こうした状況の中で、実体経済が回復してきているかを示すデータである各種経済指標にも注目が集まります。今週は主要国の1-3月期のGDP(国内総生産)改定値の公表が相次ぎます。

 5月25日(月)に、ドイツの1-3月期国内総生産(GDP、改定値)、28日(木)に米国の1-3月期国内総生産(GDP、改定値)、29日(金)インドの1-3月期国内総生産(GDP)、29日(金)ブラジルの1-3月期国内総生産(GDP)、などが公表されます。

 また、27日(水)にラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁発言、29日(金)米国パウエル米連邦準FRB(米連邦準備制度理事会)議長発言などもあり、主要国・地域の金融当局が足元の情勢や今後の動向をどのように見ているのかが示されるため注目です。

>>経済指標カレンダーはこちら

国内株式
海外株式・ETF
FX
金・プラチナ取引
暗号資産取引「楽天ウォレット」