昭和57年(1982年)3月23日の上場来、東京金は初めて6,000円台に到達

 2020年5月16日(土)午前0時06分、ついに、東京金先物(標準)価格が、1グラムあたり6,000円という大台に達しました。この夜間取引では6,036円まで上値を伸ばしました。6,000円台は、昭和57年(1982年)3月23日(火)の上場来、初めてです(期先ベース)。

 取引開始から現在までの、およそ38年間の値動きと主な変動要因を確認します。取引所名は、1983年当時は東京金取引所、1984年11月に左記取引所を含む3つの取引所が統合して東京工業品取引所、2013年2月に商号変更により東京商品取引所となりました。

図:東京金先物の価格推移と主な変動要因(期先、月足) 単位:円/グラム
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出所:TOCOM(東京商品取引所)のデータをもとに筆者作成

 昭和57年(1982年)から令和2年(2020年)までのおよそ38年間の東京金先物価格を振り返ると、6,000円という水準が、38年間の最高水準であること、さらに、この間の最安値(1999年9月16日につけた836円)の7倍以上であることが分かります。

 価格水準のほか、直近1年間の値動きにも注目です。2012~2019年半ばまで、およそ7年半続いた当時の高値圏である4,000~5,000円のレンジの上限を大きく上放れた後、現在まで1年間、上昇が継続しています。2019年6月月初から2020年5月18日までのおよそ1年間の上昇率は30%を超えています。

 数年間、超えられなかった上限を超え、その後1年間、上昇し続けているわけです。金相場の変動要因には、「有事のムード」、「代替通貨」、「代替資産」、「中国・インドの宝飾需要」、「中央銀行の保有」など、少なくとも5つの材料が存在すると考えているのですが、直近1年間の目立った上昇は、5つのうち1つがそれぞれ、入れ代わり立ち代わり、作用して生じたものではないと、筆者は考えています。

 少なくとも2つ以上同時、つまり複数の材料が重なり続けたことが、数年間超えられなかった上限を超え、かつ、1年間継続した30%を超える上昇を発生させたのだと思います。

 東京金先物価格が6,000円を達成できたのは、材料が複合的に作用した(筆者はこれを材料の“多層化”と呼んでいます)ためだと思います。