中長期的には、“有事のムード”と“代替通貨”が金(プラチナも)を支える可能性あり

 足元、欧米で大規模な金融緩和が行われていますが、中長期的な視点で、今後の金相場の動向を考える上で、欧米で大規模な金融緩和が行われたリーマン・ショック直後から数年間の、NY金とNYダウの値動きを参照することが有効だと、筆者は考えています。

図:NY金とNYダウの値動き(2008~2014年)

出所:CMEなどのデータをもとに筆者作成

 リーマン・ショック後、欧米で大規模な金融緩和が行われていた期間は、基本的には、“株高・金高”でした。また、2011年の中頃、株安が目立った時、金はさらに上値を伸ばしました。欧米の大規模な金融緩和時によって、中長期的に“代替通貨”(ドルやユーロの代わり)として物色され、なおかつ短期的に“代替資産”(株の代わり)として物色されたわけです。

 コロナ禍の今、欧米で大規模な金融緩和が行われています。この状況が数年続けば、リーマン・ショック後のように、数年間、金価格は上昇し続ける可能性があり、かつ、短期的に株価が不安定になった時には、金価格は短期的にさらに上値を伸ばす可能性があると、筆者は考えています。

 また、“株高・金高”をもたらす欧米の大規模な金融緩和は、プラチナの反発を誘発する要因になると考えられます。実際に、今年3月4週目から4月上旬まで、“株高・金高・プラチナ反発”の傾向が目立ちました。以下は、欧米の大規模な金融緩和によって“株高・金高・プラチナ反発”が起きる仕組みを示したイメージ図です。

図:欧米の大規模な金融緩和によって“株高・金高・プラチナ反発”が起きるしくみ

出所:筆者作成

 

 株高は金価格の下落要因(代替資産の側面における下落要因)ですが、この要因を相殺する上昇要因が発生すれば、金価格は上昇します。

 欧米で大規模な金融緩和が行われた場合、株式市場には“景気回復期待”、金市場には“欧米の通貨の価値の希薄化懸念”という、それぞれ別々の意味の上昇要因がもたらされ、この結果、“株高・金高”が生じると考えられます。

 プラチナにおいては、欧米の大規模な金融緩和が、2つの経路で間接的に作用し、反発のきっかけになると考えられます。株高によって、プラチナの自動車排ガス浄化装置向け、および宝飾向け消費が回復する期待が高まり、同時に、金高によって、貴金属で最も人気がある金につられて上昇する動機がうまれます。

 さらにプラチナは、これらに加え、もともとコロナ禍でも、“リーマン・ショック直後の安値水準を底割れしていない”ほど、比較的底堅い、という特徴があります。

図:東京金と東京プラチナの価格推移(期先、月足、終値) 単位:円/グラム

出所:TOCOMのデータをもとに筆者作成