東京金6,000円到達は、短期的に、3つの材料が束になって起きた

 東京金の6,000円達成に向けた直近1年間上昇は、有事のムード(資金の逃避先として)だけ、代替通貨(ドルやユーロの代わりとして)だけ、代替資産(株の代わりとして)だけ、など単発の材料が作用して起きたのではなく、有事のムードと代替通貨、代替資産、この3つが束になって起きたのだと、筆者は考えられます。

 以下は、東京金先物価格に最も関わりの強いNY金先物価格と、NYダウ平均の推移です。

図:NY金先物(期近 日足 終値)とNYダウ(日足 終値)

出所:CME(シカゴ・カーマンタイル取引所)などのデータをもとに筆者作成

 今年(2020年)3月の月初から3週目まで、いわゆる“新型コロナ・ショック”で、NY金もNYダウも、ともに下落しました。しかし、3月の4週目からともに反発しました。欧米の大規模な金融緩和が始まり、ダメージを負った主要国の経済が回復する期待が高まったためです。

 NY金とNYダウが同時に上昇した後、4月中旬以降、NYダウの上値が重くなったタイミングで、NY金が強含みました。そして、この強含んだNY金につられて、東京金が6,000円に到達しました。

 新型コロナウイルスがパンデミック化した3月以降、“有事のムード”(資金の逃避先として物色される動機)は底流し続けています。そして、3月4週目以降は欧米で大規模な金融緩和が始まったことで、欧米の主要国で市中に供給される通貨の量が増加し、当該国・地域の通貨の価値が希薄化する懸念が浮上し、“代替通貨”(ドルやユーロの代わり)の側面から金が物色される動機が生まれました。欧米の大規模な金融緩和は、現在も継続中です。

 そして、NYダウの上値が重くなったタイミングで、“代替資産”(株の代わり)の側面から金が物色される動機が生まれました。

 “有事のムード”、“代替通貨”、“代替資産”の3つが束になって、NY金が上昇し、それによって東京金が上昇して6,000円を達成したのだと思います。足元の金価格の上昇は、“どれか1つの材料だけ”で起きたのではない、と筆者は考えています。