原油価格上昇の一因である米株価指数の上昇。失業率が最悪でも“予想より悪くない” 

 5月8日(金)、米国では4月の雇用統計が公表されました。非農業部門の雇用者数は前月比2,050万人減、失業率は14.7%でした。非農業部門の雇用者数は1930年代の大恐慌後の最大の減少、失業率は戦後最悪でした。

 4月の米雇用統計は、記録的な悪化を示したわけですが、この日、米国の主要株価指数は上昇しました。そして、米国の主要株価指数が上昇することで、将来の消費増加期待が増幅し、原油価格も上昇しました。

 以下は、NYダウ平均株価と米国の失業率の推移です。

図:NYダウと米国の失業率の推移

出所:各種情報源より筆者作成

 米国の失業率がすさまじい勢いで上昇しました。一方、米雇用統計の公表日、NYダウは反発しました。NYダウの他、S&P500、ナスダックも上昇しました。グラフのとおり、米国の株価指数と失業率は、おおむね逆に動く傾向がありますが、5月8日(金)は、記録的な悪さの失業率が公表されたにもかかわらず、米国の株価指数株価、そして米国の株価指数株価につられる傾向がある原油相場は上昇しました。

 一部の報道は、米雇用統計公表日の5月8日(金)に株価が上昇したのは、非農業部門の雇用者数も失業率も、“事前予想に比べて悪くなかった”ためだとしています。この日の米国の主要株価指数は、非農業部門の雇用者数(前月比)や失業率の内容を“予想よりも悪くなかった”と受け止め、最悪の事態が避けられたことに安堵したのだと思います。

 また、たとえ各種雇用関連の指標が記録的な悪さでも、市場関係者の予想よりも悪くなかったことを重視し、前向きに評価していることから、米国の主要株価指数とそれにつられる傾向がある原油市場も、上昇要因の“よいところ取り”をしている面もあると思います。