サウジは4月、過去最高水準まで大増産。しかし“大増産宣言の規模より少ない”

 5月1日(金)、海外大手メディアが、サウジアラビアの4月の原油生産量が、日量1,130万バレルだったと公表しました。実際に、日量1,130万バレルは、サウジにとってどのような規模でどのような意味があるのでしょうか。

図:サウジの原油生産量 単位:百万バレル/日量

出所:海外大手メディアのデータおよびOPEC(石油輸出国機構)の資料をもとに筆者作成

 日量1,130万バレルは、サウジにとって過去最高です。米国に追いつけなかったものの(同月の米国の原油生産量は日量およそ1,240万バレルとみられる)、それでも、3月31日の減産終了後、5月1日から減産が再開されるまでの端境期を最大限、有効活用したと言えます。

 サウジがこのような大増産を行ったにも関わらず、原油相場が上昇したのは、いくつか理由が挙げられます。

(1)大増産とはいえ、4月は減産実施期間ではなかったため、増産をとがめるムードが出にくかったため。

(2)OPECプラスが一時的に崩壊するきっかけとなった3月6日の会合直後に、サウジが宣言した大増産の目標である日量1,230万バレルよりも、小規模だったため。

(3)過去2度、大増産(駆け込み増産)をした後に減産を実施したことがあり、今回の大増産が今後の減産実施の前兆と受け止められたため。

 新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を受け、世界の石油の消費量が大きく減少する見通しが出ている中で、サウジが大増産を行えば、供給過剰が拡大する可能性が高まります。それにも関わらず、この大増産のニュースが出ても、原油相場は上昇しました。

 筆者は、上記の3つの理由の中で、(2)の日量1,230万バレルに届かなかったことが、最も大きな理由だったのではないか、と考えています。市場は、3月になされたサウジの日量1,230万バレルまでの大増産宣言が実現しなかったことを“予想よりも悪くなかった”と受け止め、最悪の事態が避けられたことに安堵したのだと思います。

 また、史上最高水準までサウジが大増産を行ったという下落要因があったとしても、過去に宣言された最悪の事態が回避されたことを重視し、前向きに評価していることから、上昇要因の“よいところ取り”をしている面もあると思います。