経済再開派 対 慎重派

 5月は、経済悪化、企業業績悪化、倒産・廃業、失業の深刻さが次々明らかになる場面と位置づけてきました。6月にかけて、政策サポートが十分かチェックされ、必要なら追加政策も迅速に講じられるでしょう。同時に、ホットスポットでの感染ピークアウト、医療体制の整備、抗体検査の結果を見ながら、経済活動の再開が政治的テーマとなるでしょう。

 経済活動の再開は、政治的対立を先鋭化させる恐れがあります。廃業、失業の危機に直面した人々のストレスは募り、経済再開への要求が強まります。政治家が支持者のために経済活動の再開を急ごうとすれば、感染症専門家や慎重派の政治家から反対も叫ばれるでしょう。20世紀初頭のスペイン風邪や1960年代の香港インフルエンザなど歴史の教訓は、感染第2波の深刻さにこそあります。

 とりわけ米国では、トランプ米大統領の共和党が経済再開に積極的で、民主党が慎重という対立軸が明確です。共和党知事州で経済活動再開を早めに進め、民主党知事州では外出制限を継続する傾向も観察されます。このことは、新型コロナウイルス感染症が米大統領選挙の行方を左右する鍵になり得ることを示唆します。

 11月の米大統領選挙まで、感染爆発の第2波がなければ、共和党の経済再開の積極路線が正しかったという評価になり、慎重な民主党はダメ出しされるでしょう。大統領選挙前に感染第2波が生じれば、共和党の勇み足が糾弾されるでしょう。

 コロナ次第で選挙結果が一転しかねない不確実性は、トランプ政権のストレスを高めると想定されます。そのはけ口の一つが中国になる可能性は小さくないでしょう。米中対立は一見国際関係の問題でも、実は優れて国内政治問題の反映です。米国内経済が停滞する中、米中貿易をいたずらに波立たせることは控えるかもしれません。しかし、大統領選挙後、そしてコロナ禍終息後の米中摩擦を懸念させる「口撃」が、市場の不安の種になると予想します。