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 日本の株式市場は、新型コロナウイルスの世界的な拡大などを懸念して、日経平均株価は急落し、その後も変動の大きい動きが続いています。こうした中、日経平均株価をTOPIX(東証株価指数)で割り、両指数の相対的な強さを示す『NT倍率』は3月9日は14.18倍まで上昇しましたが、3月19日には12.89倍まで低下し、その後も乱高下しています。『NT倍率』の変動の要因と今後の動向を検討してみたいと思います。

【ポイント1】『NT倍率』は14.18倍まで上昇後急低下

『NT倍率』は2005年には10倍を下回っていましたが、その後はほぼ一貫して上昇し、今年の3月9日には14.18倍まで上昇しました。その後日本株が大幅下落する中、『NT倍率』は3月19日に12.89倍まで低下、4月17日には13.79倍に上昇するなど乱高下しています。その背景には市場見通しや日本銀行のETF(上場投資信託)買い入れ増額の影響などについて見方が分かれ、強弱感が対立していることがあります。

【ポイント2】日経平均先物売りや日銀のETF増額などが影響

『NT倍率』の急低下は、コロナ感染拡大で日本株の下落リスクが急速に高まり、日経平均先物に売りが集中したことにあります。また日経平均株価は構成比率上位20銘柄で50%を上回りますが、景気敏感株が多く、景気減速懸念から売られたことも影響しました。

 日銀は3月16日に金融政策決定会合を開き年6兆円としているETFの購入目標額を12兆円に倍増することを決めました。実際に3月19日の東京市場で、1回あたりの金額として過去最大となる2,004億円を買い入れており、日銀のETF買いの大部分を占めるTOPIXの買い入れ額が増えるとの思惑から「日経平均売り・TOPIX買い」の取引が活発化しました。

【今後の展開】『NT倍率』は高水準継続の方向

 今回の『NT倍率』の急低下は株式市場や景気に対する極度の悲観と日銀のETF増額の相乗効果でもたらされたとみられます。ただ4月17日現在のネット裁定残高▲7.15億株などから見て日経平均先物のショートポジションは高水準とみられます。また、過去に日銀がETFで日経平均を減らし、TOPIXを増やした場合でも、『NT倍率』は一旦は低下しても、短期間で反転しています。従って『NT倍率』は日経平均構成比上位20銘柄の個別要因などにより高い変動率は続くものの、低下の方向に変わる可能性は小さいとみられます。