「合計思考」の応用例

 合計で効果を考える思考法は応用例が広い。

 話が細かくなるので詳細は省くが、企業金融論の世界で有名な「モディリアーニ・ミラーの定理」(企業価値は資金調達方法に依存しないことなどを述べた理論)や、公的年金が民間の株式を保有すべきか否か、といった問題を考える上でも、「合計思考」は有力だ。

 例えば、「公的年金は国民の持ち物だと考え、株式の価値は企業や経済のあり様によって決まるのだ」と考えると、結局、国民にとっての公的年金の株式運用の可否は、「公的年金が株主である方が、企業の価値が高まるのか否かに依存する」と分かる。

 筆者個人の見解としては、公的年金の株式保有には反対だ。議決権行使をはじめとする株主としての企業への働きかけも、株式の運用自体も、公的機関よりも、民間の方が立場として適切だし、よりよく行えると思うからだ。かつて「民間でできることは、民間で」というキャッチ・フレーズがあったが、株式運用は「民間の方がよりよくできること」だろう。