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 オフィスビル仲介大手の三鬼商事は、オフィスビルの『空室率』や平均賃料を毎月公表しています。2020年3月の東京ビジネス地区の『空室率』は1.50%と9カ月ぶりに上昇しましたが依然極めて低水準にあり、需給がひっ迫した状況が続いています。ただし今回のコロナウイルスの世界的な感染拡大の影響で今後のオフィスビル市況にも不透明感が高まっており、その影響を注視していく必要があるとみられます。

【ポイント1】3月の東京のオフィスビル『空室率』は依然低水準

新築ビルは低下

 三鬼商事が4月9日に発表した東京ビジネス地区(千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区)の2020年3月のオフィスビル『空室率』は、2002年1月以降での最低を更新した前月2月対比では+0.01ポイントの1.50%となり9カ月ぶりに上昇しましたが、依然極めて低水準にあります。

 内訳をみると、新築ビル3棟が満室で竣工したことなどから、3月の新築ビルの『空室率』は、前月比▲0.98ポイント低下して2.97%となりました。既存ビルは、一部で大型空室の募集開始などがあり、同+0.03%の1.45%でした。

【ポイント2】平均賃料は上昇続く

前年同月比は+6.91%

 2020年3月の東京ビジネス地区の平均賃料は、前月比+0.20%(+46円)の坪当たり2万2,594円でした。平均賃料は、75カ月連続上昇が続いています。前年同月比は+6.91%(+1,460円)でした。

 平均賃料の内訳をみると、新築ビルは前月比4.43%(+1,345円)の3万1,684円、既存ビルが同+0.19%(+42円)の2万2,373円でした。

【今後の展開】コロナウイルスの世界的な感染拡大の影響が懸念される

 3月のオフィスビル『空室率』は前月比小幅に上昇しましたが、依然極めて低水準にあります。オフィスビルの需給は新規ビル供給量が大幅に増加する中、企業の旺盛なオフィスビル需要や低金利などを受け、ひっ迫が続いてきました。ただし今回のコロナウイルスの感染拡大抑制策による景気減速によりオフィス需要にもマイナスの影響が及ぶと考えられ、オフィス市況への影響が懸念されます。

 2次的には働き方改革が進むなか、今回の件で加速した在宅勤務などの動きは終息後も完全には元に戻らない可能性があります。こうした影響によりオフィス市況が変調しないか注視していく必要があるとみられます。