バイオテクノロジーはディフェンシブでグロース?
米国株式が反発したなか、相対的に優勢となっているのがナスダック・バイオテクノロジー指数です。バイオテクノロジーとは、バイオ(生物の持っている働き)を生かしたテクノロジー(技術)を総称します。
近年は、バイオテクノロジーを活用した新薬の開発が行われており、癌(がん)治療やアルツハイマー型認知症などについて、従来の放射線や抗がん剤と比べて高い治療効果が期待される薬品も生まれています。
景気循環に比較的左右されない「ディフェンシブ」(安定成長)と呼ばれるヘルスケアセクターのなかで、長期的視野で高い成長が期待できる「グロース」とも言えそうです。図表3で示す通り、ナスダック・バイオテクノロジー指数は、3月は市場平均(S&P500指数)と同様急落しましたが、年初来高値(2月19日)からの下げ幅の3分の2以上を取り戻し、再び高値をうかがう動きをみせています。
<図表3>ナスダック・バイオテクノロジー指数の相対推移
こうしたバイオテクノロジー分野の個別銘柄投資は、専門性が高い上に銘柄リスク(商品化の実現性やその時期の不確実性など)も高いと言われます。そこでご紹介したいのが、投資成果がナスダック・バイオテクノロジー指数に連動するように運用されている米国上場ETF(上場投資信託)「iシェアーズ NASDAQ バイオテクノロジーETF」(IBB)です。
図表4は、同ETFの上位組入銘柄を組入ウエイト(比率)の降順で一覧したものです。興味深いのは、株価が年初来14.9%上昇しているギリアド・サイエンシズ(GILD)、年初来36.3%上昇しているリジェネロン・ファーマシューティカルズ(REGN)、年初来90.4%上昇しているモデルナ(MRNA)などが「新型コロナウイルスの治療薬やワクチン開発」で注目されている銘柄ということです。
まさに人類が現在向き合い、今後も警戒し続けるべき「生物学的な脅威」への対抗薬だけでなく、様々な病気の予防・治療、健康増進や健康年齢の長寿化に貢献する企業の集合体に分散投資するETFと言えるでしょう。
銘柄によっては、創薬開発プロセスへの先行投資で利益が赤字、あるいはEPS(1株当たり利益)の水準が低く、予想PER(株価収益率)が比較的高い銘柄も散見されるのも特徴です。IT(情報技術)分野と同様、絶え間なくイノベーション(技術革新)を生み出し、世界の先端分野をリードする米国。こうしたイノベーションの原動力を維持・継続できる環境こそが、米国経済の競争力の源泉であり最大の強みと言えるでしょう。バイオテクノロジー分野を「コロナ危機後の成長分野」として注目したいと思います。
iシェアーズNASDAQバイオテクノロジーETF(IBB)の上位組入銘柄
ティッカー | 銘柄名 | 直近 株価 |
年初来 騰落率 |
2020年 予想 PER |
---|---|---|---|---|
GILD | ギリアド・サイエンシズ | 74.63 | 14.9 | 11.9 |
VRTX | バーテックス・ファーマシューティカルズ | 255.23 | 16.6 | 33.7 |
AMGN | アムジェン | 221.80 | -8.0 | 14.3 |
BIIB | バイオジェン | 326.94 | 10.2 | 10.2 |
REGN | リジェネロン・ファーマシューティカルズ | 511.69 | 36.3 | 19.4 |
ILMN | イルミナ | 294.29 | -11.3 | 44.1 |
ALXN | アレクシオン・ファーマシューティカルズ | 96.94 | -10.4 | 8.9 |
SGEN | シアトル・ジェネティクス | 125.04 | 9.4 | -41.4 |
INCY | インサイト | 90.95 | 4.2 | 30.3 |
BMRN | バイオマリン・ファーマシューティカル | 82.36 | -2.6 | 57.9 |
ALNY | アルナイラム・ファーマシューティカルズ | 121.50 | 5.5 | -19.1 |
MRNA | モデルナ | 37.25 | 90.4 | -23.8 |
※単位 直近株価:ドル 年初来騰落率:% 2020年予想PER:倍 ※米国籍ETF(IBB)の上位組入銘柄であり、個別銘柄への投資を推奨するものではありません。 出所:Bloombergのデータより楽天証券経済研究所作成(2020/4/15) |
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