世界が注目する米国NY州の新型コロナ感染動向

 世界市場の注目は、米国の新型コロナウイルス感染動向、なかでもNY(ニューヨーク)州の感染動向に集まっています。米国全体では15日、感染者数(累計)が63万人を超え、ウイルス感染による死者は3万925人と過去最多となりました。

 こうしたなか、NY州のアンドルー・クオモ知事は13日の記者会見で、「NY州内の感染死者が1万人を超えた」とした一方、同州の感染状況が「最悪の状況を脱した」とも述べました。

 図表2は、NY州の感染者数(累計)と、5日前比の増加ペースを示したものです。感染者数はいまだ増加していますが、そのペース(5日前比増加数)にピークアウトの兆しがみられます。クオモ知事は、ニュージャージー州など東部の計7州が、経済活動再開に向けた取り組みで協力していくと発表しました。感染動向はいまだ予断を許さない状況ですが、市場は徐々にロックダウンの解除・緩和による状況改善を視野に入れる可能性はあります。

<図表2>世界が注目する米国NY州の新型コロナ感染動向

出所:Bloombergのデータより楽天証券経済研究所作成(2020/3/2~2020/4/15)

 トランプ大統領も、感染拡大でほぼ停止状態となっている米国の経済活動を5月1日に一部から解除したい意志を表明しました(14日)。ただ、NIH(米国立衛生研究所)国立アレルギー・感染症研究所のファウチ所長は、「やや楽観的過ぎる」との認識を示しておりいまだ流動的です。

 先読み(Forward Looking)しがちな株式市場は、「政策に売りなし」と呼ばれる「過去最大の金融緩和策や景気対策」(企業や失業者の救済策)がもたらす総悲観の後退を経て、ロックダウン解除(緩和)後の景気回復を期待しようとする動きもみられます。

 実際FRBは9日、信用市場の混乱を安定化させるため約2.3兆ドル(約240兆円)の追加金融緩和策を発表。感染拡大や原油相場急落で資金繰りが困難となった企業の社債が今後「非投資適格(ジャンク)級」に格下げになると見込まれる中、FRBは社債購入プログラムの拡充策としてハイイールド債の一部もバランスシートに受け入れる方針を示しました。

 こうした当局の積極的な支援策で、ハイイールド債市場は先週1998年以来最大の値上がりをみせました。「戦時対応」とも呼べる景気対策を受け、社債市場の信用スプレッド縮小(金融ストレス低下)を介し、株式などリスク資産の戻りを支える展開となりました。