コロナ危機後の景色は「悲観」なのか「希望」なのか

 米国の新規失業保険申請件数は最近2週間で約1千万人増加しました。3月の米雇用統計では非農業雇用者数が前月比で約70万人減少しました。日本でも3月の景気ウォッチャー調査が一般庶民や自営業者の景況感が急悪化していることを示しました。

 企業業績に下押し圧力がかかり、今後のニュースフロー次第で株価が戻り売りに直面する展開も想定されます。ただ、新型コロナ感染が収束に向かい、5月以降に移動制限が解除(緩和)されれば、抑え込まれていた需要(ペントアップ・デマンド)が持ち直し、徐々にでも雇用が回復する動きが期待できます。

 国別で濃淡はあっても、コロナ危機後は「史上最大の作戦」(金融緩和と景気対策)の効果が、景気と株価の浮揚要因となることが見込めます。図表3は、世界のGDP規模で上位5カ国の四半期別・実質成長率見通し(市場予想平均)を一覧したものです。

<図表3:市場は年後半からの景気回復基調を視野に>

注:実質成長率は国別に「前年同期比」もしくは「前期比年率」が重視される
出所:Bloomberg集計による市場予想平均より楽天証券経済研究所作成(2020/4/8)

 図表3をみると、米国の第2四半期(4-6月期)成長率が-9.4%の落ち込みとなりますが、第3Q以降は徐々に回復する予想です。興味深いのは、感染拡大が一巡したとされる中国です。世界で最も早くロックダウンが実施された湖北省・武漢は今週8日に移動制限が解除されました。

 中国の経済活動は2月に急悪化し、3月には回復の動きをみせています。したがって、中国の実質成長率は第1四半期に-5.2%と落ち込んだ後、第2四半期は+3.7%とプラスに転じ、年後半には成長軌道を取り戻すと予想されています。

 主要5カ国の成長率を算術平均すると、第1四半期と第2四半期は景気後退(2四半期連続のマイナス成長)を余儀なくされますが、早晩見込まれる「コロナ危機」後の景気を視野に入れると、成長率は年後半に徐々に持ち直すと予想されています(市場予想平均)。

 こうした先行き景況感を織り込むなら、年後半にかけて株式のリターンが債券に対して優位を取り戻す可能性が高いと考えられます。

 安倍首相は7日の非常事態宣言で、「(東日本大震災に続き)今また私たちは大きな困難に直面している。しかし私たちは皆で共に力を合わせれば、再び希望を持って前に進んでいくことができる。ウイルスとの闘いに打ち勝ち、この緊急事態という試練も必ずや乗り越えることができる。」と述べました。

 株式市場も「悲観や不安」を乗り越え、「希望や期待」を織り込んでいくと信じています。

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