“輸出先の奪い合いと増産量への警戒”でサウジとロシアが犬猿の仲に
特に3月6日の会合以降、サウジとロシアの仲が悪いことが、頻繁に取りざたされ、石油戦争の象徴のようになっています。なぜ、このような関係になったのでしょうか。
3月6日の会合の翌日、サウジは、先手を打つように、日量1200万バレルまで生産量を増加させる(2月比、日量200万バレル程度の増産)という大規模な増産実施予告をしました。まるで減産を終了させたのも、今後の石油市場を牛耳っていくのも自分だと言わんばかりに、です。
不意を突かれたように、しかも規模が大きい内容で、先手を打たれたロシアはサウジに対し、少なからず反発心をいだいたと見られます。
新型コロナウイルスの世界的な感染拡大が続き、石油の消費が減少する懸念が強まっている中、輸出先を探すことが以前よりも難しくなっていると考えられます。両者の共通の輸出先であり消費大国である中国の景気後退により、サウジもロシアも中国以外の輸出先を探す必要が生じている可能性があります。
また、もし仮に、サウジが本当に日量1,200万バレルの生産を行った場合、サウジがロシアを上回る産油国になり、原油市場におけるパワーバランスに大きな変化が生じます。
このように考えれば、サウジとロシアの対立は、サウジの先制口撃で始まった“輸出先の奪い合いと互いの増産量への警戒”によるものだと言えます。これが、サウジとロシアの石油戦争の正体なのだと筆者は考えています