米国の大型株で「配当利回り6%超の銘柄」を選別

 上述した通り、内外で足元の景況感は急速に悪化し、株式市場の上値は重い展開となっています。一方、先週(3月27日号)ご紹介した「終わりのない弱気相場はない」との格言もあります。そこで、市場が総弱気(株価が大幅に下落した局面)でこそ注目したい指標として「配当利回り」にあらためて注目したいと思います。

 本稿では、米国株式市場の時価総額上位100社で構成される「S&P100指数」(米国の主力大型株)のなかで、株価の急落で「予想配当利回り」(主に2020年12月期/市場予想平均)が著しく上昇した銘柄群をご紹介します。

 図表3に示した15銘柄は、S&P100指数を構成する「大型銘柄」のなかで、予想配当利回りが6%を上回っている銘柄を一覧にしたものです。S&P100指数を構成するこれらの銘柄は、米国市場で各業種(セクター)の主力銘柄と言えるでしょう。

 なお、経営方針として配当を払わず将来投資を先行させている銘柄、配当額が少ない(配当利回りが低い)ハイテク・IT関連株などはこうした一覧の上位に顔を出す可能性は比較的低いです。

図表3:S&P100指数銘柄の配当利回り上位銘柄

# ティッカー 銘柄名 業種名 直近株価 予想PER 予想
配当
予想
配当
利回り
1 SPG サイモン・プロパティー・グループ 金融 47.04 7.28 8.26 17.56
2 SLB シュルンベルジェ エネルギー 12.59 14.50 1.85 14.69
3 DOW ダウ・インク 原材料 27.04 10.89 2.86 10.56
4 KMI キンダー・モルガン エネルギー 12.73 13.25 1.24 9.70
5 MO ア ルトリア・グループ 生活必需品 37.61 8.57 3.42 9.09
6 XOM エクソン・モービル エネルギー 37.53 40.49 3.39 9.04
7 GM ゼネラル・モーターズ(GM) 一般消費財 19.26 5.41 1.53 7.93
8 WFC ウエルズ・ファーゴ 金融 26.57 7.64 2.08 7.82
9 T AT&T 通信 28.05 7.83 2.09 7.44
10 CVX シェブロン エネルギー 68.56 54.46 4.89 7.13
11 PM フィリップ・モリス・インターナショナル 生活必需品 71.12 13.20 4.77 6.70
12 KHC クラフト・ハインツ 生活必需品 23.68 10.53 1.57 6.65
13 MET メットライフ 金融 27.90 4.65 1.84 6.61
14 ABBV アッヴィ ヘルスケア 73.42 7.70 4.81 6.56
15 IBM IBM テクノロジー 105.14 8.10 6.73 6.40
直近株価:ドル 予想PER:倍 予想配当:ドル 予想配当利回り:%
注1:上記一覧のなかには楽天証券でお取り扱いしてない銘柄も含まれています。
注2:予想PER(株価収益率)や予想配当利回りは市場予想平均
出所:Bloombergのデータより楽天証券経済研究所作成(2020年4月1日)

 2月から3月にかけての「全面安」に巻き込まれた大型株のなかには、予想配当利回りが二桁に達した銘柄も登場しています。とはいえ、米国経済が直面している景気後退の影響で、株価が「将来の減配リスク」を織り込んできた可能性も精査する必要はあります。

 こうした銘柄群のなかでアルトリア・グループ(MO)、エクソン・モービル(XOM)、AT&T(T)、シェブロン(CVX)、フィリップ・モリス・インターナショナル(PM)、アッヴィ(ABBV)などは、25年以上にわたり「連続増配」を記録してきた(配当を毎年度増やし続けてきた)銘柄で、「配当貴族指数」(S&P500 Dividend Aristocrats Index)の構成銘柄です。

 リーマン・ショックとその後の景気後退時でもDPS(1株当り配当額)を増加させ、「株主重視の経営」を続けてきた銘柄として知られています。

 もちろん、こうした銘柄が今年も増配を続ける、あるいは配当額を維持することを保証することはできません。また各企業の経営者も今後の増配を約束しているわけではありません。ただ、「早晩収束が見込まれるウイルス騒ぎ」の向こう側を視野に入れた時間軸を前提とすれば、配当利回りが6%超に上昇した米国大型株は、債券市場金利(利回り)と比較した観点で注目に値すると考えられます。

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