最善シナリオからリスクに備える

 相場回復シナリオは、まだあまりにも不確かという情勢判断と、「相場の歴史的な暴落は、人生における数少ない買い場」という基本観をどう両立させるか、投資家それぞれにさまざまな取り組み方があるでしょう。

 私流のアプローチ法は、相場下落の渦中でも(いや、渦中だからこそ)前向きなスタンスを失わないよう、その時々の最善のシナリオを基本に据え、そこから起こり得る諸リスクを想定して備えるというものです。

 現時点で私が考える最善シナリオを以下にご紹介します。推奨というより、単なるイメージトレーニング用のご参考程度にお考えください。

 まず4月、株式相場は一進一退しつつも持ち直し機運を継続するところから始まります。次々発表される3月経済指標は大幅に悪化しますが、企業休止、都市封鎖の影響は指標ごとにマチマチであったり部分的であったり、市場も覚悟のうちと、過敏な反応は抑えられます。このころにイタリア、スペイン、米ニューヨークの新型コロナウイルス感染が峠を越えれば幸いですが、他地域への拡散、いったん落ち着いた後の再燃リスクを排除できません。

 4月、株式相場が高くとも半値戻し付近までで停滞し、投資家や投機筋の戻り売り圧力が重くなります。3月末決済・決算を経た企業の切実に深刻な情報、より深刻化した4月経済指標が明らかになると、市場の不安も再燃。感染終息のメドが立たない場合、このころから経済対策の効果の持続力について懸念が浮上する恐れもあります。この流れで5月に相場は反落、「Sell in May」です。

 あくまで最善シナリオとして、ここで株式相場は3月の下値を割れず、感染の抑制に一定の進展があり、治療薬やワクチンの開発に関する好ニュースもチラホラ出て、辛うじて経済の下げ止まりを確認しながら、6月ごろから市場は再び回復に向かいます。OPEC(石油輸出国機構)が総会を機に、いいかげんにロシアと原油減産で合意できれば、米シェール企業の信用不安も緩和されるでしょう。

 ここから数カ月間、相場が失地回復を進めるイメージですが、秋口からは再び警戒モードです。企業はなかなかフル稼働に戻れず、経済対策の効果が切れることも気がかりになるでしょう。北半球の冬期に向けて新型コロナウイルス感染再加速への懸念、確執が続く米中間の経済・貿易摩擦が、米大統領選挙後に悪化するとの警戒も浮上する恐れがあります。

 2021年にかけて、経済と市場が回復に向かえるか、低迷を続けるか、このシナリオ分岐の検討はこれ以降に探ることになります。