1.最近の米国株式市場

 最近の米国株式市場の大きなリスク要因は、米国大統領選と新型コロナウイルスの感染拡大でしたが、足元で原油価格の急落が起きました。主要産油国で構成するOPECプラスが追加減産で合意に至らず、サウジが原油価格の引き下げを決めたためです。

 この判断が修正される可能性はありますが、仮に低水準の原油価格が続いた場合、中小のオイル関連企業の資金繰り悪化や、負債のデフォルト化が懸念されます。これが第3のリスクとして浮上していると考えられます。(2020年3月9日時点)

 以下で述べますが、米国大統領選のリスクは後退したと考えます。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大防止策による経済のダメージについては、今後発表されるマクロの経済指標や、企業決算発表時の企業コメントを確認したいと考える投資家が多いと考えられます。

 こうしたデータから実際の深刻さと、回復までの目途が立たなければ、企業の利益水準の予想が困難だからです。このような時期に起きた原油価格の急落が、米国株式市場の重しになる可能性があります。
 

2.米国大統領選のリスク

 米国大統領選ですが、投資家から最も警戒されていた急進左派のエリザベス・ウォーレン上院議員は、他の候補者との獲得代議員数の差が開き、撤退しました。

 また、これまで獲得数に勢いがあったリベラル派のバーニー・サンダース上院議員も、厳しい状況となってきました。先週3月3日のスーパーチューズデーでは、サンダース氏の4勝に対し、ジョー・バイデン前米副大統領は10勝となりました。現地の報道では、これまでの総獲得数でも、バイデン氏がサンダース氏を上回っています。

民主党候補の獲得代議員数

  • ジョー・バイデン氏…509
  • バーニー・サンダース氏…449
  • エリザベス・ウォーレン氏…37

出所:各種資料、取得時期は日本時間2020年3月5日午前10時50分

 勝利を収めるには1,991の獲得数が必要であるため、まだ勝負はついていませんが、今後のヤマ場である10日の6州と17日の4州の予備選ではバイデン氏が有利になるかもしれません。

 2016年に、サンダース氏は10州のうち代議員数の多い南部フロリダや中西部イリノイ、オハイオでクリントン氏に敗れています。

 保険制度改革や富裕層への増税案をうたうサンダース氏の劣勢は、株式市場にとって好材料です。

 バイデン氏の躍進を受け、先週の米国株式市場では、医療保険関連の銘柄、ユナイテッドヘルス・グループ(UNH)や、ヒューマナ(HUM)、ETF(上場投資信託)では、SPDR ファンド(XLV)
等が物色されています。同ETFは、ジョンソン&ジョンソン(JNJ)ユナイテッドヘルス・グループ(UNH)メルク(MRK)などで構成されています。