今後、投資してみたい金融商品・国(地域)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト 吉田 哲

 今回は、毎月実施している質問「今後、投資してみたい金融商品」で、“特になし”と回答したお客様の割合に注目します。

 当該質問は複数回答可で、選択肢は、国内株式、外国株式、投資信託、ETF(上場投資信託)、REIT(リート:不動産投資信託)、国内債券、海外債券、FX(外国為替証拠金取引)、金やプラチナ地金、金先物取引、原油先物取引、その他の商品先物、特になしの13個です。

 以下のグラフは、設問「今後投資してみたい投資商品」で“特になし”と回答した人の割合、そして俗に“恐怖指数”と呼ばれる「VIX指数」の推移を示したものです。

 VIX指数とは、日本を含む世界各国の株価指数のけん引役と言える、米国の主要株価指数の一つであるS&P500指数が急落する時に、上昇する傾向がある指数です。世界の株価指数のけん引役が急落するような強い悲観的なムードが生じた時に上昇する傾向があることから“恐怖指数”と呼ばれています。

図:設問「今後、投資してみたい金融商品」で、「特になし」を選択した人の割合と恐怖指数(VIX指数)の推移 (2016年5月~2020年2月)

出所:CBOEおよび楽天DIのデータをもとに筆者作成

 もともとVIX指数は、S&P500指数の向こう30日間における価格変動の予想範囲を示すことを目的に設計されたものですが、先述のとおりS&P500指数が急落する時に上昇する傾向があるため、(設計された目的ではなく)わかりやすい特徴が市場関係者や投資家に浸透し、今では、VIX指数は“何か大きな悪いことが起きているか(いないか)を確認するための指標”のように用いられていると、筆者は感じています。

 上図のとおり、そのVIX指数と、設問「今後、投資してみたい金融商品」で、“特になし”を選択した人の割合は、ほとんど同じような動きをしています。特に、短い期間で大きく上昇するタイミングがほとんど同じであることが特徴的です。

 VIX指数が短い期間で大きく上昇する時は、世界の株式指数のけん引役の一つであるS&P500指数が急落し、おおむね市場で何か大きな悪いことが起きている時と言えますが、それと同時に、“特になし”の割合も大きく上昇するのはなぜなのでしょうか。

 先述のとおり、当該設問の選択肢は特になしを含め13ありますので、例えば、国内株式が投資をする環境として適さない局面であったとしても、債券や金・プラチナなど、代替の可能性のある選択肢は複数あります。このため、“特になし”を選択する人の割合が増えることは、一見すると、なさそうに思えます。

 しかしそれでも、VIX指数と同時に“特になし”を選択する人の割合が、短期的に大きく上昇しているわけです。

 このことについて考えているうちに“休むも相場”という相場格言が頭に浮かびました。常に何かの金融商品に資金を投じるのではなく、状況によっては、一時的に何にも投資をしないこともまた、投資行為の一つ、という教えを示す格言です。

 今回注目した、設問「今後、投資してみたい金融商品」で、“特になし”を選択した人の割合とVIX指数の関係から、相場の急変時、投資家の皆さんにおいては、あわてて無理をして取引をすることなく、冷静に、そして積極的に“休むも相場”を実行している方がおられるのだと、改めて、感じた次第です。

 今後も、引き続き、これらのデータに注目していきたいと思います。

表:今後、投資してみたい金融商品 2020年2月調査時点(複数回答可)

出所:楽天DIのデータより筆者作成

表:今後、投資してみたい国(地域)2020年2月調査時点(複数回答可)

出所:楽天DIのデータより筆者作成