日経平均の見通し

楽天証券経済研究所 シニアマーケットアナリスト 土信田 雅之

「前回調査から見通しが悪化 警戒感が強まる」

 今回調査における日経平均の見通しDIの結果は、1カ月先がマイナス67.13、3カ月先はマイナス29.04となりました。

 DIの値が大きく悪化した前回調査の結果(それぞれ40.54とマイナス5.83)と比べても、相場の見通しがより一層悪くなった格好です。回答の内訳グラフを見ても、弱気派の占める割合が増え、強気派の割合がかなり小さくなっていることが分かります。とりわけ1カ月先見通しグラフ内での弱気派が7割を超えていることは印象的です。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成 
出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成 

 もちろん、今回の調査期間(2月25~27日)の日経平均が急落している最中だったことを考慮する必要はありますが、新型コロナウイルスによる影響の大きさと、その時間軸の長さが当初に想定していたよりも「厄介なものになりそう」という不安が増していることは間違いないと言えます。

 その一方で、急ピッチな株価急落は「さすがに下げ過ぎだろう」という突っ込み警戒感も浮上させます。実際に、3月相場入りとなった2日の取引で、日経平均はマイナス圏からプラスへと上昇に転じており、少なくとも株価下落のピッチはいったん落ち着きを見せたと捉えて良さそうです。

 となると、気になるのはその後の動きになります。

 急落後の大きな切り返しと言えば、米中摩擦の悪化が懸念されて株価が急落した2018年12月の局面が思い出されます。当時は、高値(2018年12月3日の2万2,698円)から安値(同年12月26日の1万8,948円)まで3,750円の下げ幅を演じた後に、順調に株価が戻りを試す展開へと転じ、2万2,362円(同年4月24日の高値)まで上昇していきました。

 その一方で、急落後の切り返しが継続的な戻り基調とはならずに、下値を模索する動きが続いた局面もあります。具体的には2015年8月のチャイナ・ショックの時です。当時は高値(2015年8月11日の2万946円)から安値(同年8月26日の1万7,714円)まで3,232円の下げ幅を見せた後、荒い値動きを繰り返しながら下値を更新し、結局は同年9月29日の安値(1万6,901円)まで下落することになりました。しかも、その後はしばらく株価を戻したものの、さらに大きな「下落第2弾」を迎えることになります。

 今回の株価急落後の動きが果たして順調に株価を戻す「米中摩擦」パターンとなるのか、それとも波乱含みの「チャイナ・ショック」パターンとなるのかがこれからの焦点になりますが、天井圏から下落が始まっていることや、実体経済への悪化懸念に対して見極めが現時点で進んでいないこと、そして新型肺炎ウイルスの状況が現在進行形である点などを踏まえると、「チャイナ・ショック」パターンとの共通点が多く、気掛かりです。

 そのため、しばらくは株価が戻す場面も増えるかと思われますが、中長期的な上昇トレンド復帰を見込む売買については注意が必要になってくるかもしれません。