もう一つの大事な「売り」理由

 株の売り方に関する一般論を完結するためには、もう一つ大切な「売り」の理由を付け加えなければならない。

 それは、「お金が必要なとき!」だ。ふつう、株式の運用は、お金を増やすために行う。真にお金が必要な場合に、持ち株を売ることを躊躇する必要はない。理屈っぽく言うと、持ち株の期待リターンがもたらす効用よりも、現金の効用が高まったのだから、株を現金に換えることが合理的だ。

 遠慮はいらない。「気持ち良く、使ってください!」

 持ち株を「売る」ことが正しい場合を、たぶん重要な順番から、まとめると、

(1)お金がいるとき

(2)その銘柄を買った理由がなくなったとき

(3)その銘柄のリスクが過大になったとき(→通常は部分売却)

(4)素晴らしく期待リターンの高い他の銘柄が見つかったとき

と思い至る。時に、重要度の順番は入れ替わるかもしれないが、こんな感じだ。

補足
 株式や投資信託の「売り方」については、今でも納得的な方法論を書いている本は少ないように思う。2014年と少々古い記事だが、個別株のポートフォリオを運用する前提で投資の理屈に沿って書いてあるので、内容的には全く古くないし、「一般投資家には少し難しいかな」と思わなくもないが、修正点はない。現実的には、持ち株を一部売って、新しい銘柄を買い足すような調整が正解になる場合が多いだろう。インデックス・ファンドのようなもので運用している投資家の場合は、「お金が必要な時に部分的に売却する」のが売る理由のほとんど全てだ。いずれの場合も、自分の買値を気にせずに売れるようになると一人前だ。(2020年6月11日 山崎元)