「スクエア・ポジション」はどこか

 前記は、一定の金額を長い期間運用することを想定した、ポートフォリオ調節の一般論だ。そもそも一定の株式運用額を保持した状態が「普通」の場合を想定している。

 株式投資は、企業の資本に投資して、企業活動のリターンを得ようとする行為であり、長期的に投資ポジションを維持する事が、運用資産の成長に役立つと考えることができる。多くの投資家が、特に、長期的な資産形成を行う上では、株式に関してこうした投資ポジションを維持し、ポートフォリオの調節を継続していくのがいい。

 もっとも、証券会社にとっては残念なことだが、投資家が、売買コストを払った上で、ポートフォリオのリターン(リスクであっても)を自信を持って改善できるような機会を見つけることはそう頻繁ではないのが現実だ。特に、最初にバランスのいいポートフォリオを作ることができた場合、持ち株を売却することが正しい機会は、そう頻繁に訪れるものではない。

 他方、こちらは証券会社にとってうれしい顧客だが、何らかの理由で短期的に株式でリスクを取るポジションを作っている株式トレーダーは、資金を与えて企業に利益を稼がせることを目的としているわけではなく、市場参加者よりも自分が優位な情報に賭けているだけなので、彼の「普通」あるいは「標準」、あるいは為替などのディーリングの世界で言う「スクエア」のポジションは、「(持ち株も、空売りも)ゼロ」である。

 こうした「投資」というよりも「投機」のリスクを主として取っている場合は、「自分が有利だと賭けるに足る」と判断できる状況が解消した場合、買いでも、売りでも、速やかにポジションを解消することが正しい。

 とはいえ、売買の動機が、投資でも、投機でも、売買にコストが掛かることは同じなので、そもそも株を買ったり、空売りを仕掛けたりする段階で、これを計算に入れておかなければならないことは、いうまでもない。