今回の急落、これまでと異なる厄介な側面も

 これまでの急落時と異なる点、だからこそ気にすべき点を挙げるなら、①空売りが少ないこと、②大型株での避難先がないことでしょうか。まず、この手のすぐ戻すパターンの急落時は、東証の空売り比率は平常時より大きく上がっていました。

 昨年も、前日比300円以上の下落になった日に4度、空売り比率が50%を超えています。日本株を保有していない海外ヘッジファンドが、下落しそうな日本株を空売りして短期リターンを狙う常套手段。だから、買い戻しも入って、リバウンドも早かった…。

 ただ、今回は25日の空売り比率が44.53%、26日が45.99%。この中には、2月優待の権利取りに伴うイオンや吉野家などの空売り(優待クロス)分も含むため、この分を除けばもう少し低いはずです。これは、今年の空売り比率の平均値42.68%より少し高い程度。つまり、空売りではない売り(実注文売り)がこれまでの急落時より多いということです。

 25日の引け後、国内大手運用会社のレオス・キャピタルワークスが顧客向けメッセージで、ひふみの純資産総額における現金の比率を過去の運用の中でも最大規模に高めた(1月末の現金比率0.7%→2月25日時点で30%弱)ことを報告していました。その理由として、「不確実性の広がり」を挙げています(非常に勉強になるメッセージですので、HPで見てみてください)。不確実性を嫌ってリスク回避に動いているプロの機関投資家が出てきたフェーズと考えることができます。

 次に、大型株での避難先が無い、これが新型肺炎リスク相場特有の状態です。海外投資家による日経平均先物売り、この影響は日経平均の高ウエイト銘柄(ファーストリテイリング、テルモ、リクルートなど)に出ます。

 これは毎度のこと。パフォーマンスがこれまで良かった半導体株(東京エレクトロン、アドバンテストなど)もハイベータ株ということもあり、強く下がります。これも毎度。また、リスクオフによる長期金利の低下で、金融株(三菱UFJなどメガバンクや、第一生命など保険株)が問答無用で下げます。これも毎度。そして、リスクオフ地合いで最弱なのが日本のマザーズ市場…。

 なのですが、こういったタイミングでは、最小分散系銘柄(債券に近い株という概念)が避難先となってきました。下落地合いに逆行する大型株があったわけです。代表格は、オリエンタルランドであり、JR東海やJR東日本、近鉄G、セコムといった銘柄になります

 ただ、今回は、これら最小分散系銘柄の多くに「深刻過ぎるインバウンド減少による業績影響」という売りカタリストが存在。こういった避難先まで潰され、完全な袋小路に…。だからこそ、「現金比率を高める」という選択肢が取られやすい面があります。