電力株の投資判断

 原発事業について、不透明材料が残っていることを考えると、現時点で、原発事業を有する電力会社に投資するのはリスクが高く、投資は避けた方がよいと思います。

 そんな日本の電力会社ですが、原発事業のリスクから解放されれば、高く評価できます。日本は、送配電ロスが5%しかない、極めて高効率の送配電網を維持しています。送配電にかかる高い技術力は注目に値します。高圧交流送電では、世界トップとなる技術を有します。

 日本の電力会社が持つ、高い発送電技術は、今後、新興国に輸出していく価値があります。ところが、原発事業のリスクに縛られて、思うような海外での事業展開ができなくなっています。とても、残念なことだと考えています。

2020年「発送電分離」後の、「送配電会社」に注目

 日本では、電力自由化が進められています。既に、発電事業・電力小売事業への参入は自由化されているので、東京ガス(9531)大阪ガス(9532)など異業種から、参入が相次いでいます。

 電力自由化の仕上げとして、4月に発送電分離が行われます。既存の電力大手が、発電会社・送配電会社・電力小売会社に分割されます。東京電力HD(9501)は、その準備として、既に、3事業を社内分社しています。

 分割されることで、電力会社が弱体化すると考える人もいますが、私は、逆だと考えています。既存の電力大手から、原発事業が分離されるならば、残った事業が、息を吹き返す可能性があります。

 特に注目しているのは、送配電会社です。先に述べたとおり、日本は、送配電で世界トップクラスの技術力を有しています。世界には、非効率な電力網がたくさんあり、日本の技術の貢献余地は大きいと考えられます。東京電力は、福島原発事故を起こす前、この技術を積極的に輸出しようとしていました。それが、原発事故によって頓挫した経緯があります。

 原発事故の補償を、国の責任で完全に行うことが前提となりますが、送配電事業が、原発事業と完全に資本分離されるならば、投資妙味の高い会社になる可能性があります。

 ただ、発送電分離がどのような形で行われるか、細部はまだ分かりません。送配電会社に、原発事業との資本的なつながりが残るならば、投資はむずかしいとの判断になります。4月に行われる発送電分離がどういう形になるか、具体的な中身が決まるのに、注目したいと思います。