オーバー・リアクション後の逆張り

 アンダー・リアクション後に順張りが有効なら、オーバー・リアクション後に逆張りが有効だろうと考えるのは筋が通っている。もっとも、これらは、アンダー・リアクション、あるいはオーバー・リアクションという言葉の意味に含まれている論理なので、具体的にどんな手段があるのかが問題だ。

 銘柄選択に関する逆張りのリサーチで有名なものは、各種のリターン・リバーサル現象に関するものだ。リターン・リバーサルについては、短期では1日あるいはそれ以内、長期では5年程度の期間のリターンに関わるものがあるし、リターン観測の方法にも幾つかの方法がある(たとえば、β値やマルチファクター・モデルのファクターに帰属するリターンを除いたリターンに関する逆張りを行うようなアプローチがある)。

 リターン・リバーサルを利用した投資やトレーディングには、大規模な資金とデータ、分析ツール、さらにはトレーディング・システムなどが必要になることが多く、一般投資家には実現が難しいかもしれない。

 個人投資家が応用可能な「逆張りが有効になるパターン」の一つは、純粋な投資判断以外の理由で生じた売り買いによる価格の「行き過ぎ」を捕まえる方法だ。

 例えば、ある企業に、不祥事や工場の事故、製品の不良など、業績と評判にダメージを負う事態が発生したとしよう。投資家がこの銘柄を持つことを嫌った場合、株価の判断に関係なくこの企業の株式を売却することがある(運用会社が顧客の目を意識して保有銘柄を売却するような場合が典型的だ)。こうしたケースでは、企業の実態よりも売られた株価が戻る過程で逆張り投資家が利益を得る。

 最近の例で分かりやすいのは、昨年、不祥事で上場廃止が懸念されたオリンパスだろう。上場廃止を恐れて機関投資家が同社株を処分した時に付けた株価は、当時、一般的な分析方法で、同社の事業価値(たとえば医療機器ビジネスの価値)を考えると、大幅に割安だったように思う(注:筆者は、現時点で、今後の同社の価値について「十分高いはずだ」と述べている訳ではないことに注意されたい)。

 こうした、「企業価値と株価の評価に起因するのではない売買」は株価の行き過ぎをもたらすことがある。

 株価が高すぎるケースでは、たとえばかつて、インデックスとの裁定取引に絡む需要で市場に流通する株数が少ない銘柄が割高に買われたようなケースがあった。

 一般投資家にとって、チャンスを見つけて参加しやすいのは、企業の事故や不祥事のケースだろう。新製品発表のような効果が曖昧なニュースよりも、事故や不祥事のような悪いニュースの方にそのインパクトを割合正確に見積もることのできるチャンスが多い。企業にとってネガティブなニュースと株価の動きをよく見るといい。