3.日本製半導体製造装置販売高は2019年12月に前年比プラスとなった。TSMCは2020年も設備投資を増やす計画。
半導体設備投資の動きを見ると、2019年12月の日本製半導体製造装置販売高(3カ月移動平均)は、1,779億6,700万円(前年比5.9%増、前月比3.8%減)となりました(表2)。2019年2月に前年割れして以来の前年比プラスとなりました。2019年1-3月期を大底として回復してきましたが、半導体設備投資の増加傾向がはっきりとしてきました。ロジック半導体向け設備投資の増加に、メモリ投資の回復が加わり始めていると思われます。
ちなみに、先行する北米製半導体製造装置販売高は、2019年12月に前年比18.1%増の二ケタ増になりました。
ロジック半導体向け設備投資で重要な世界最大の半導体受託製造業者TSMC(台湾)の2019年12月期決算は、表3の如くでした。通期では3.7%増収、2.8%営業減益でしたが、3Q13.3%営業増益、4Q16.0%営業増益と下期に業績が回復しました。アップル向け(iPhone向け)、5Gスマホ向け7ナノ半導体(スマートフォンのCPU、チップセット、5Gモデムを7ナノ半導体でつくる)が好調で全体の業績をけん引しました。2020年12月期は7ナノに加え5ナノが業績のけん引役となると予想されます。
設備投資は、2018年12月期104.6億米ドル(1ドル=110円換算で1兆1,500億円)から増えて2019年12月期149億米ドル(1ドル=109円換算で1兆6,200億円)と大幅に増加しました。2019年12月期の期初計画は100~110億米ドルでしたが、大幅な上乗せとなりました。7ナノラインの増強と5ナノパイロットラインの新設が大幅増加の要因です。特に4Qは55.5億米ドルと3Qの31.4億米ドルから大きく増加しました。
2020年12月期も高水準の設備投資が計画されています。TSMCでは150~160億米ドル(1ドル=109円換算で1兆6,400億円~1兆7,400億円)を計画していますが、中心は5ナノの量産設備です。アップル向けだけでなく、iPhone発売後に他の大手スマホメーカーに供給するための設備への投資が増えると予想されます。
このように、2020年にはスマホ用CPUに大きな変化が予想されます。半導体の歴史を見ると、CPUに大きな変化があるときにはメモリにも大きな変化があることが多いです。2020年前半は、次世代の高速DRAM「DDR5」が量産開始となります。5G用スマホに搭載されるDRAMはDDR5になり、4GよりもDRAM容量が大きくなります。スマホのストレージ(NAND)も平均容量が大きくなり、5Gスマホで撮影した4K動画(いずれは8K動画)がSNSに大量に投稿されたり、4K画質の映画、ドラマをスマホで視聴することができるようになるため、データセンターの増強、新設も必要になります。
このため、メモリ投資も再開、増加が予想されます。2020年のメモリ投資がどの程度回復するのかは、1月30日発表のサムスンの決算発表を待ちたいと思いますが、小幅な増加ではない増加が予想されます。
2020年は半導体設備投資全体が増加に転じると予想されます(ロジック向けが伸び続け、メモリ投資が回復する)。
なお、2020年3月期3Qの主要半導体関連企業の決算発表日は以下の通りです。
2020年1月23日(木) ディスコ
1月28日(火) 信越化学工業
1月29日(水) アドバンテスト、SCREENホールディングス
1月30日(木) 東京エレクトロン
2月3日 (月) レーザーテック(2020年6月期2Q決算)
2月4日 (火) ソニー
2月12日(水) ルネサスエレクトロニクス
2月13日(木) SUMCO
表2 日本製、北米製半導体製造装置の販売高(3カ月移動平均)
表3 TSMCの業績
グラフ5 TSMCのテクノロジー別売上高
グラフ6 TSMCの年間設備投資額