単身者と家族層がバランスよく混在するエリアだが…
「住みたい街」として人気の西宮市だが、それは人口動態にも表れている。直近の国勢調査(図表1)によると、人口減少トレンドにある兵庫県だが、西宮市では安定した人口増加が見られる。世帯数や単身者世帯率(図表2)を見てみる、西宮市は3世帯に2世帯は、2人以上の世帯と、ファミリー層からの人気がうかがえる。
[図表1]西宮市の人口動態
[図表2]西宮市の世帯数
西宮、とりわけ「西宮北口」は転勤族にも人気の高いエリアとして知られている。交通の利便性はもちろんのこと、生活の利便性が高く、あまり“関西らしさ”を感じさせない。関西に馴染みの薄い人でも、自然と街に溶け込めるところが支持されている理由だという。
次に住宅事情を見てみよう。賃貸住宅における空室率(図表3)は西宮で5%と低水準。震災により築浅物件が増え、また生活利便性の向上により、賃貸ニーズが向上したことが、低水準の空室率の要因だと考えられる。このことは統計でも表れている。西宮における住宅の築年数(図表4)を見てみると、90年代が30%と最も多く、特に1995年~2000年に限ると20%強となる。西宮において5軒に1軒は、震災後の復興のなかで建てられたものなのだ。
[図表3]西宮市の住宅事情
[図表4]西宮市の住宅の築年数
続いて、賃貸住宅事情と居住者の属性について見てみよう。西宮における家賃の分布(図表5)を見てみると、6~8万円がボリュームゾーン、その次に8~10万円、4~6万円と続く。単身者用物件と推測される金額帯で半数を超えることから、西宮において、単身者は賃貸経営の重要なターゲットになると考えられる。
[図表5]西宮市の借家の家賃分布
賃貸物件に住む単身者の年収(図表6)を見ていこう。300万円未満が58.1%。500万円未満まで含むとで8割強となる。西宮には、「関西学院大学」「神戸女学院」「武庫川女子大学」など大学が多く点在する。年収300万円未満が過半数を占めるのは、学生ニーズが旺盛であることの裏返しと考えられるだろう。
[図表6]西宮市 単身者の賃借人の年収
駅周辺に絞って見ていこう。「西宮北口」周辺には5万人強が住み(図表7)、1世帯当たりの人数は2.1人ということから、単身者世帯とファミリー世帯が混在しているエリアだと推測される。続いて直近の中古マンションの取引から、駅周辺の不動産マーケットの状況を見てみる(図表8)。1平米当たりの平均取引価格は、西宮市平均よりも15万円ほど高い。ファミリー向け物件も豊富なエリアであることから、平均取引価格を押し上げていると考えられる。
[図表7]「西宮北口」周辺の人口動態
[図表8]「西宮北口」周辺の中古マンションの取引状況
古くから高級住宅地と知られ、近年は震災復興の過程で「阪急西宮ガーデンズ」などの多くのスポットが誕生し、利便性が飛躍的に向上した西宮。老若男女、多くの人をひきつける街へと変貌を続けているが、将来人口の推移を見てみると、不安が生じる。
西宮市の将来人口(図表9)は、2020年、488,486人でピークアウト。20年後の2045年には45万人を割り込む。2015年の人口の水準を100とした際、2035年に95.4、2045年に90.5となる。
[図表9]西宮市の将来推計人口
「西宮北口」周辺の将来人口推移をメッシュ分析で見ていく(図表10)。黄色~橙で10%以上、緑~黄緑0~10%の人口増加率を表し、青系色で人口減少を表すが、駅周辺は青系色で染まっている。これは西宮市全体に拡大しても同様だ。
[図表10]2015年~2040年「西宮北口」エリアの人口増減率
現在、関西で注目されているのは、万博、そして「ウメキタ」に代表される大規模な再開発である。そのエリアから外れる、「阪神地域」は人口減少が予測されている。それは賃貸ニーズが落ち込み、賃貸物件間で競争が激しくなることを意味する。
安定的な学生ニーズも、今後、少子高齢化が進行するなかでは不透明だ。10年後、20年後を見据えて不動産投資を考えるのであれば、「西宮北口」では物件の選択眼がいっそう試される、玄人向きのエリアだといえるかもしれない。
(GGO編集部)
※この記事は2019年10月11日に幻冬舎ゴールドオンラインサイトで公開されたものです。