金利上昇によるバリュー株への関心で、高配当利回り銘柄への注目は続く

 欧米の金融政策の方向性、米中貿易協議、ブレグジットなど、市場を覆っていた不透明感は12月中旬にかけて一斉に解消の方向となってきています。

 不透明感の解消に伴う景況感の改善期待は金利の上昇にもつながっていくため、金利上昇で関心が高まりやすいバリュー株(PER[株価収益率]、PBR[株価純資産倍率]、配当利回りなどの株価指標が割安な株)は、2020年に向けてあらためて注目されていくものと考えられます。

 とりわけ、資産の有効活用の必要性、株主還元姿勢の強化などを背景に、配当金の引き上げ傾向が強まっている状況下、高配当利回り銘柄が注目される地合いに変化はないと考えます。

 今回、折に触れて市場の関心が集まりそうな7つのキーワードから、それぞれ2020年に注目したい高配当利回り銘柄を紹介します。相対的に長期投資の対象となり得る銘柄を選定しています。

※配当利回りデータは2019年12月16日終値ベース。

キーワード1:グループ再編

 ここにきて市場の関心が高まっているものに「親子上場解消」が挙げられます。

 親会社と子会社がともに上場している親子上場関係の子会社においては、株主総会などで一般投資家が影響力を発揮できない状況にあります。そのため、親会社と一般株主の間には潜在的な利益相反の関係があるといえます。

 欧米では親子上場はほとんど存在せず、日本でも新ルールの骨格が2020年前半にも示される見通しで、「親子上場解消」の流れは今後も強まりそうです。

 親子上場解消の際には、親会社がプレミアムを払って子会社を完全子会社化する動きなどが多く、子会社の株主はプレミアムが享受できることになります。

【注目銘柄】タキロンシーアイ(4215)配当利回り3.76%

 伊藤忠商事が5割超の株式を保有する筆頭株主になっています。プラスチック加工大手の一角で、2017年4月には伊藤忠商事の子会社であったシーアイ化成を吸収合併しています。

 伊藤忠商事のエネルギー・化学品カンパニーの一翼を占めますが、住生活カンパニーの分野でも関りが強いとみられ、親子上場解消の際には自社に取り込む可能性が高いでしょう。その際には、PBR水準が1倍を割り込んでいるため、相応のプレミアムが期待できます。

キーワード2:増配期待

 配当金の引き上げなどを実施する企業は増えていますが、依然として増配に消極的な姿勢の企業も多くあります。ただ、競合企業の増配傾向や株主からの要求などプレッシャーが高まっているため、こうした企業群も株主還元への姿勢を強化してくることが考えられます。

 むしろ、これからの投資妙味が強いのはこうした銘柄ともいえるでしょう。ただ、十分な利益が出ていない企業に増配は要求できず、配当余力が強い銘柄が対象になります。

 キャッシュポジションが豊富で、配当性向(一株当たり利益に対する配当金の割合)が低い銘柄などが当てはまります。ちなみに、配当性向の平均はおおよそ30%と言われています。

【注目銘柄】大末建設(1814)配当利回り4.01%

 2020年3月期の年間配当金は前期の20円から大幅増配となる40円を計画しています。株主還元姿勢の強化方向がうかがえます。

 ただ、それでも配当性向は18.1%であり、平均的な数値から見ると依然増配余地が大きいとみられます。キャッシュポジションも時価総額を上回る水準と豊富にあるといえるでしょう。

 また、これからの業績に影響を及ぼす上半期受注高は前年水準を上回っており、来年度の大幅な業績失速懸念も少ないと考えられます。