2020年の日経平均は底堅い?世界的な日本への資金シフトの可能性も

 2020年の日本株は引き続き底堅い展開が続くものとみられます。

 例年、大統領選挙年の米国株は相対的に上昇率が鈍化する傾向にあります。政権交代の有無、それに伴う政策の行方などに不透明感が強まるためです。

 一方で、選挙前の株安を回避する意味からも、株価調整場面では株高政策による浮上期待が高まるため(特にトランプ政権ではこうした思惑が強まる見通し)、大幅な株価調整リスクも乏しいといえます。

 世界的な金融緩和状態が2020年も続くと予想されている中、グローバルマーケット全体から投資資金が流出する可能性は低いでしょう。このため、米国株の上値が重いと意識されれば、資金は米国から他の市場にシフトすることになります。

 ただ、2020年1月には英国がEU(欧州連合)から離脱する予定となっており、その影響が明らかになるまでは、欧州への資金シフトにも慎重な姿勢が続きそうです。こうしたなか、五輪開催国となる日本への関心が高まる可能性は高いといえるでしょう。

 2019年こそ、NYダウ平均株価と日経平均株価の株価上昇率に大きな違いはありませんでしたが、2018年までの3年間はともに日経平均がNYダウを大きく下回るパフォーマンスでした。

 2019年を含めた4年間の株価上昇率は、NYダウの6割強の上昇に対して、日経平均は3割にも満たない状況です。2020年はこうした出遅れ感も手伝って、グローバルマネーの日本市場への資金シフトが強まるものと考えます。

金利上昇によるバリュー株への関心で、高配当利回り銘柄への注目は続く

 欧米の金融政策の方向性、米中貿易協議、ブレグジットなど、市場を覆っていた不透明感は12月中旬にかけて一斉に解消の方向となってきています。

 不透明感の解消に伴う景況感の改善期待は金利の上昇にもつながっていくため、金利上昇で関心が高まりやすいバリュー株(PER[株価収益率]、PBR[株価純資産倍率]、配当利回りなどの株価指標が割安な株)は、2020年に向けてあらためて注目されていくものと考えられます。

 とりわけ、資産の有効活用の必要性、株主還元姿勢の強化などを背景に、配当金の引き上げ傾向が強まっている状況下、高配当利回り銘柄が注目される地合いに変化はないと考えます。

 今回、折に触れて市場の関心が集まりそうな7つのキーワードから、それぞれ2020年に注目したい高配当利回り銘柄を紹介します。相対的に長期投資の対象となり得る銘柄を選定しています。

※配当利回りデータは2019年12月16日終値ベース。

キーワード1:グループ再編

 ここにきて市場の関心が高まっているものに「親子上場解消」が挙げられます。

 親会社と子会社がともに上場している親子上場関係の子会社においては、株主総会などで一般投資家が影響力を発揮できない状況にあります。そのため、親会社と一般株主の間には潜在的な利益相反の関係があるといえます。

 欧米では親子上場はほとんど存在せず、日本でも新ルールの骨格が2020年前半にも示される見通しで、「親子上場解消」の流れは今後も強まりそうです。

 親子上場解消の際には、親会社がプレミアムを払って子会社を完全子会社化する動きなどが多く、子会社の株主はプレミアムが享受できることになります。

【注目銘柄】タキロンシーアイ(4215)配当利回り3.76%

 伊藤忠商事が5割超の株式を保有する筆頭株主になっています。プラスチック加工大手の一角で、2017年4月には伊藤忠商事の子会社であったシーアイ化成を吸収合併しています。

 伊藤忠商事のエネルギー・化学品カンパニーの一翼を占めますが、住生活カンパニーの分野でも関りが強いとみられ、親子上場解消の際には自社に取り込む可能性が高いでしょう。その際には、PBR水準が1倍を割り込んでいるため、相応のプレミアムが期待できます。

キーワード2:増配期待

 配当金の引き上げなどを実施する企業は増えていますが、依然として増配に消極的な姿勢の企業も多くあります。ただ、競合企業の増配傾向や株主からの要求などプレッシャーが高まっているため、こうした企業群も株主還元への姿勢を強化してくることが考えられます。

 むしろ、これからの投資妙味が強いのはこうした銘柄ともいえるでしょう。ただ、十分な利益が出ていない企業に増配は要求できず、配当余力が強い銘柄が対象になります。

 キャッシュポジションが豊富で、配当性向(一株当たり利益に対する配当金の割合)が低い銘柄などが当てはまります。ちなみに、配当性向の平均はおおよそ30%と言われています。

【注目銘柄】大末建設(1814)配当利回り4.01%

 2020年3月期の年間配当金は前期の20円から大幅増配となる40円を計画しています。株主還元姿勢の強化方向がうかがえます。

 ただ、それでも配当性向は18.1%であり、平均的な数値から見ると依然増配余地が大きいとみられます。キャッシュポジションも時価総額を上回る水準と豊富にあるといえるでしょう。

 また、これからの業績に影響を及ぼす上半期受注高は前年水準を上回っており、来年度の大幅な業績失速懸念も少ないと考えられます。

キーワード3:東京五輪

 2020年7月24日から8月9日までの17日間の日程で、東京で五輪が開催されます。

 東京五輪に関連する大規模施設の整備、海外訪日客の増加、五輪関連消費の拡大、スポーツ人口の増加などによる様々な波及効果が期待され、それによるメリットを受ける企業も多くなるとみられます。

 ただ、施設建築や交通網整備などインフラに関連する需要はすでに表面化してしまっているので、関連銘柄において注目されるのは、五輪直前、あるいは期間中に需要が表面化して、業績上振れに直結する銘柄であるといえます。

 広告宣伝、警備、TVやデジタルカメラといった小売り関連などが対象になりそうです。

【注目銘柄】スペース(9622)配当利回り4.11%

 商業施設などのディスプレー企画・設計会社です。五輪開催に向けて、首都圏中心にディスプレー需要は大幅な拡大が予想されます。

 同社は全国展開をしていますがあくまで地盤は名古屋であり、直接的なメリットは限定的かもしれませんが、東京市場での需要切迫に伴って全国的にディスプレーの採算は向上していく可能性があります。

 配当性向50%を目標にしているため、利益の増加は増配につながることも妙味になります。

キーワード4:注目テーマ(5G、AI、自動運転車など)

 株式市場における手掛かり材料が乏しいときや市場に閉塞感が強まっているときなど、テーマ物色の動きが活発になりやすく、これは2020年の相場でも同様でしょう。

 現在注目されやすいテーマとしては、5G、全固体電池、AI(人工知能)、ネットセキュリティ、教育ICT、セルロースナノファイバー、国土強靭化、自動運転車、EV(電気自動車)などが挙げられます。

 一方、テーマ物色には廃りも多く、仮想通貨やブロックチェーン、ソーシャルゲームなどは依然と比べて関心が高まりにくくなっています。

 中長期という観点からすると、市場拡大の実現性が高く、実際に業績への寄与が見ている銘柄のリスクが小さいと言えるでしょう。

【注目銘柄】宇部興産(4208)配当利回り3.67%

 京セラと5G通信基地局用のセラミックフィルタ事業の拡大を目指して合弁会社を設立しました。今後の基地局普及が見込まれる中で、活躍余地が広がっていきそうです。

 また、リチウムイオン電池セパレータでは自動車用で世界シェア1割を握るとされており、マクセルと合弁展開も行っています。

 5G、電気自動車と市場で注目される2つのテーマでの展開力を評価する余地は大きいと考えられます。

キーワード5:リバウンド期待

 リターンリバーサル(これまで買われていた銘柄が売られて、売られていた銘柄が買われる動き)の流れもたびたび注目されます。

 2019年の日経平均は年初から約20%の上昇となっていますが、上場銘柄の4分の1はマイナスパフォーマンスとなっています。

 今後訪れるリターンリバーサル相場の際には、これらの銘柄が物色対象となりますが、その前に一段安となるリスクも考慮すれば、高配当利回り銘柄などは利回り水準が下支え効果になるため、相対的に下振れリスクが小さいと言えるでしょう。

 なお、構造的な不況事業に陥っていないかなど見極める必要性はあります。

【注目銘柄】コニカミノルタ(4902)配当利回り4.15%

 第1四半期の決算発表を受けて株価は急落し、その後の戻りも乏しく、現在も安値圏での推移が続いています。

 ただ、2020年3月期業績大幅悪化の一因としては、新製品の生産混乱、新規事業の立ち上げ負担、構造改革費用など一過性の影響も大きく、2021年3月期は大幅な収益回復が期待できます。

 英国のEU離脱に関する不透明感の後退で、対ユーロで円安が進みそうなこともプラスに効いてきそうです。

キーワード6:業績拡大継続

 上場企業の上半期経常利益は前年同期比で1桁台後半のマイナス成長であったとみられます。特に、製造業では通期予想の下方修正を発表する企業も多かった印象です。

 主に米中の貿易摩擦問題を背景とした最終需要の落ち込みなどが利益悪化の背景となります。こうした状況の中でも着実に増収増益を続けている企業は、折に触れて評価の高まる場面がありそうです。

 4~5月の通期決算発表のタイミングでは、業績悪化で売られた銘柄の業績回復にスポットが当たるでしょうが、その前の第3四半期決算発表のタイミングなどで注目度が高まるものと想定します。

【注目銘柄】アルプス技研(4641)配当利回り3.52%

 2019年12月期は6期連続での増収営業増益となる見通しです。技術者派遣の大手企業として、企業のアウトソーシング需要の拡大を着実に捉える状況となっています。

 自動車向けが中心になっていますが、同業界は自動車の電動化や自動運転化といった変革期に差し掛かっているので、当面は高水準の人材確保が必須といえます。当面の業績リスクは乏しいと言えるでしょう。増配傾向が続いていることも妙味になります。

キーワード7:新興市場

 日経平均と東証マザーズ指数の騰落率を見ると、2019年はここまで日経平均の2割超上昇に対してマザーズ指数は7%の上昇、2018年は日経平均の2割弱の下落に対して3割超の下落となっています。

 指数インパクトが特定銘柄に偏りがちとはいえ、新興市場銘柄の中長期的な出遅れ感は強いと捉えられ、2020年にはその反動が強まる可能性もあるでしょう。

 一般的に新興市場銘柄は配当よりも収益成長に関心が偏重していますが、今後は高配当利回り銘柄への関心が高まっていく余地もあると考えます。

【注目銘柄】夢真ホールディングス(2362)配当利回り3.89%

 建設現場における施工管理技術者派遣が主力事業となっています。

 現在、建設関連業界では施工管理者不足が深刻な問題となっており、同社へのニーズは非常に強まる方向と考えられます。また、建設現場での外国人労働者の増加傾向は今後も強まるものとみられ、管理技術者派遣で大手の同社にはより重要性が高まっていくでしょう。