「人口減」が見込まれる高級住宅地

 二つの高級住宅地を分析していく。まず人口増加率(図表1)だが、田園調布を有する大田区も、成城を有する世田谷区も、共に増加率3%台と顕著な伸びを見せている。続いて世帯について(図表2)。単身者世帯の割合は共に50%前後と、都心と比べて低水準。家族層と単身者層がバランスよく居住しているエリアだと言えるだろう。

[図表1]2地域の人口動態

出所:平成27年度「国勢調査」より

[図表2]2地域の世帯数

出所:平成27年「国勢調査」より

 住宅事情を見ていく(図表3)。二つの区を比較すると空室率は大田区が10.9%に対して、世田谷区は6.1%と低水準となっている。この原因のひとつとして考えられるのが、建物の築年数(図表4)。大田区のほうが築40年以上の建物が多い。一般的に築浅物件のほうが賃貸ニーズは高く、結果、世田谷区のほうが空室率は低くなっていると推測される。

[図表3]2地域の住宅事情

出所:総務省統計局 平成25年「住宅・土地統計調査」より

[図表4]2地域の住宅の築年数 

出所:総務省統計局 平成25年「住宅・土地統計調査」より

 駅周辺に的を絞って分析していく。まず人口や世帯についてみていく(図表5)。「田園調布」、「成城学園前」、共に持ち家率が7割近くと高水準であることは、両地域とも高級住宅地であることが一因だろう。「田園調布」の西口にはほとんどマンションは見当たらず、「成城学園前」も駅周辺を除けば瀟洒な一軒家が多い。

 このことは、直近で取引のあった中古マンションを抽出し、不動産マーケットの状況を表した[図表6]にも影響していると考えられる。今回抽出できた物件は、「田園調布」はすべて駅東口エリアで、「成城学園前」は駅南側を中心としたエリア。つまり不動産投資でマンションが取引されているのは、「高級住宅地」のイメージではないエリアに限られると推測される。

[図表5]2駅周辺の人口動態と住宅事情

出所:平成27年度「国勢調査」より

[図表6]2駅周辺の中古マンションの取引状況 

出所:国土交通省 「土地情報総合システム」より作成

 ちなみに地価公示を見ると、「田園調布」駅西口エリア、駅から280mの住宅地で1,080,000(円/m²)、「成城学園前」駅北口エリア、駅から550mの住宅地で845,000(円/m²)と、高級住宅地にふさわしい価格である。