今週の見通し

 先述のとおり、先週は週初から週末まで、全体的には急変がなかった週でした(ビットコイン[暗号資産]を除く)。米中貿易戦争や米国の金融政策などの目立った変動要因に関する具体的な変化を示す経済統計の発表の機会が少なかったこと、発表された一部の統計でもサプライズ感をともなったものがほとんどなかったことが、その要因と考えられます。

 また、リスクを回避するスタンスを取った方がよいのか、リスクを取る積極的なスタンスを取った方がよいのか、各種市場参加者において、方針を決めにくい状況だったことも関係しているとみられます。

 先週の初めに、「香港人権・民主主義法案」が米上院を通過したことで、トランプ米大統領が署名すれば同法律が成立する状態となりました。香港側に利する、つまり中国側が不利になる同法案にトランプ大統領が署名をすれば、米中の対立が激化し、米中貿易戦争の鎮静化がより難しくなることが懸念されます。

 逆に、署名をしなければ、米中対立のさらなる激化が避けられ、貿易戦争が鎮静化に向けて進展する期待が高まります。情勢が混乱する香港に関連する法案を巡る動きにおいて、トランプ大統領の胸先三寸次第で、最大の懸案事項と言える米中貿易戦争の状況が大きく変化する状態にあるわけです。

 このような状況の中、方針を決めきれない市場参加者が増え、その結果、値動きが小幅なものになったと考えらえます。下落した銘柄の数が比較的多かったのは、どちらかと言えば、足元の状況を不安視するムードが強かったことを示していると考えられます。

 今週は、11月26日(火)に パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の議会証言27日(水)に、米国の10月の個人所得11月のシカゴ購買部協会景気指数ベージュブック(米地区連銀経済報告)などの公表が予定されていますが、先週同様、経済統計の発表について、その数は少ないと言えます(月末・月初は、前月および前々月分の状況を示す統計の発表が相次ぐものの、それ以外のタイミングは少ない傾向がある)。

 パウエルFRB議長の議会証言については、トランプ大統領が利下げ圧力を強める中、米国の現在の景況感や利下げの必要性などについての、現在のFRBの考えを知るきっかけとなると考えられます。

 トランプ大統領が「香港人権・民主主義法案」に署名をして米中の対立が激化しないことが前提条件と言えますが、パウエル議長が議会証言で12月のFOMC(連邦公開市場委員会)で今年4回目の利下げを実施することを示唆すれば、景気回復期待が高まり、(香港情勢、および同情勢も関わる米中貿易戦争という下落要因はあるものの)短期的には、米国の株価指数を中心に上値を伸ばす、あるいは反発する銘柄が目立つ展開が予想されます。

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