最近までの株価上昇は「実際の価格とのギャップ拡大」?

 そこで、NYダウの値動きについてもチェックしていきたいと思います。

■(図4)NYダウ (日足)の動き(2019年11月15日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 11月に入ってからのNYダウのローソク足に注目すると、図1の日経平均とは違ってかなり陽線が多く、順調に上値を伸ばしてきたことが分かります。そのため、足元の日経平均がNYダウの上昇について行けていない場面が増えている点は頭に入れておく必要があります。

 日経平均は需給的要因(積み上っていない裁定買い残やダブルインバース型ETFの信用買い残の異常な積み上がり)もあって、下げにくくなっている一方で、上がりにくくなり始めている可能性があるわけです。ちなみに、先週の日本株は為替の円高傾向も影響して上値を抑えている面もあります。

 最近までの株価押し上げエンジンとなってきた米中協議の進展については、市場の予想通り両国間で「第一段階」の合意が署名・調印される可能性がかなり高いと思われますが、その具体的な内容やスケジュールは未定です。合意によって緩和・撤廃される関税や規制の度合い次第では、「期待をかなり先取りしていた」なんてことも十分にあり得ます。

 なお、著名投資家であるジョージ・ソロスは、「市場において投資家の認識と実際の価値はほとんど一致しない」という考え方で知られています。

 簡単に説明すると、株価(市場価格)は企業の業績や見通し、経済指標などの景況判断、政治的動向など、様々な材料に対する投資家の認識によって形成されていきますが、期待(不安)の先取りや過度な楽観(悲観)などによって、市場の価格と実際の価格との間にはギャップが生じます。こうしたギャップの発生や拡大、そしてそのギャップを修正していく動きを捉えることが投資の本質であるというわけです。

 つまり、最近までの株価上昇が実際の価格とのギャップを拡大させている最中ならば、修正局面に入るまでは株価は上昇していくものの、いざ修正へと舵の向きが切り替われば、今度はギャップを埋めるべく株価が下落していくことになります。

 現時点ではまだ積極的な売りが出ているわけではなく、当面は株価上昇に合わせて動く投資スタンスで良いかと思われますが、好材料(米中関係改善期待など)を過大評価して株価の上昇を正当化してしまうと痛い目に遭うことになりますので、株価が深押しし始めたタイミングでの素早い手じまいが重要になりそうです。