簡単な計算例

 簡単な計算例をやってみよう。ある友人が「国内株式の投資信託を25%、外国株式の投資信託を25%、先進国債券に投資する投信を15%、国内債券と預金を合わせて35%」持っているとする。この友人のポートフォリオの、(1)リスクと、(2)期待リターンと、(3)最大損失率をざっくり計算してみよう。

 まず、リスクの計算だ。
20×0.25+20×0.25+10×0.15+0×0.35=11.5
なので、11.5%だと計算された。

 次に期待リターンを求めよう。
5×0.25+5×0.25+0×0.15+0×0.35=2.5
であるから、2.5%だ。株式が合計50%なので2.5%はすぐに分かるだろう。

 外国債券の期待リターンが0%なのがご不満な方がいらっしゃるかもしれないが、もともと内外の債券・預金の「円ベースでの」期待利回りは、長期的に同じになるように為替市場が裁定しようとしている。高金利通貨がいいとも、低金利通貨がいいとも言えないので、今なら「ゼロ」としておいていいだろう。まして、外国債券を素材にした運用商品は手数料が高い物が多いので、むしろマイナスに利回りを想定したいくらいだ。

 最後に、最大損失率を求める。
2.5 - 2×11.5= -20.5
であり、ポートフォリオの金額の20.5%が1年間で失われる可能性がある、と一応想定する。運用金額が3,000万円なら615万円、160兆円なら32兆8,000億円だ。

 お気づきの読者もおられようが、160兆円という数字を出してみたのは、公的年金を運用するGRIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の現在の「基本ポートフォリオ」が、内外の株式が25%ずつ、外国債券が15%、国内債券が35%であり、運用資産額が約160兆円あるからだ。

 友人が3,000万円運用しているとすると、

「まあまあ、いいポートフォリオだと思うよ。
 期待リターンは2.5%で、リスクは11.5%だよ。1年後の最大の損失率を一応推定すると、20.5%だから、最悪の場合は金額にして615万円くらいの損を一応覚悟しなければならないということだね。もっともこの逆に、同じくらいの確率で765万円(2.5+2×11.5=25.5、3,000万円の25.5%は765万円)儲かることもあるという計算でもある。
 敢えて言うと、外国債券はリスクの割に期待リターンが低いから、要らないかな。主な問題は運用のリスクが適切な大きさかどうかだね…」
といった会話になることが予想できる。

 外国債券については、これを売却して、同じ期待リターンでリスクを下げる方法、あるいは一部(売却代金の半分)を株式に振り向けて、同じリスクで期待リターンを上げる方法をアドバイスする事ができるだろう。

 もっとも、最大の問題は、友人にとって、現在どのくらいの大きさのリスクを取ることが適切なのかだろう。