NT倍率も急上昇!

 また、筆者がよくチェックする指標の1つに「NT倍率」があります。「N」は日経平均株価、「T」はTOPIXのことで、日経平均がTOPIXの何倍の数値かを表したものです。

 このNT倍率が、10月に入り大きく上昇しているのです。NT倍率が上昇しているということは、日経平均の方がTOPIXに比べて値動きが強いことを示しています。

 個人投資家の肌感覚に最も近いのはマザーズ指数だと筆者は思いますが、日経平均とTOPIXとを比べてどちらか、と聞かれたら迷わずTOPIXと答えます。

 TOPIXは東証1部上場の全銘柄を対象とした指数であるのに対し、日経平均は東証1部の225銘柄のみを対象としているからです。
 さらにその225銘柄の多くは個人投資家があまり積極的に投資対象とはしていません。

 はっきり言って、NT倍率が急上昇しているときというのは、日経平均だけがやたら強いものの、個別銘柄をみるとイマイチ…であることが非常に多いです。

 個人投資家が利益を上げやすい環境は、逆にNT倍率が低下しているときです。
 この点からも、今の日本株上昇は、個人投資家の多くが恩恵を受けられるタイプのものではないことが分かります。

信用評価損益率もほとんど改善していない

 筆者は、個人投資家の現状を最も端的に表しているものが「信用評価損益率」だと考えています。

 信用評価損益率とは、信用取引で株を買っている投資家が、どれくらい含み損益を抱えているかを示すものです。マイナスが大きければ大きいほど、個人投資家の多くは多額の含み損をかかえて投資家心理が冷え込んでいる状況であることを示します。

 10月11日時点での信用評価損益率はマイナス13.63%で、今年に入ってから全くと言ってよいほど改善していません。さらには、9月以降日経平均が大きく上昇したにもかかわらず、信用評価損益率はほとんど改善していません。

 ということは、個人投資家が保有している銘柄の上昇は限られたものにすぎなかった、ということがいえるのです。