予測を上回る中国経済の減速が、世界経済に影響するおそれ

 先週18日に発表された中国の7~9月期GDPは前年比6.0%と2四半期連続で減速し、1992年以降の過去最低を更新しました。2018年1~3月期の6.8%のピークから減速が続き、1年半で0.8%の減速と、かなりの減速幅です。中国政府は2019年の目標を「6.0~6.5%」としていますが、その下限となっただけでなく、2020年のGDPを2010年比で倍増させる目標にも黄信号が灯りました。倍増達成には2019~2020年に平均6.2%前後の成長を必要としているからです。

 前回のコラムでお伝えしたIMF(国際通貨基金)の10月時点の経済見通しでは、中国の2019年GDPを6.1%、2020年を5.8%としていますが、今回の発表で2020年見通しの5.8%に近づく可能性が高まりました。中国経済の減速は、主要先進国だけでなく世界経済全体にも影響を及ぼすおそれがあります。IMF見通しでは、世界全体の2020年の成長率を下方修正して3.4%としていますが、2019年の見通し(3.0%)よりも上向くと予測しています。しかし、このまま中国経済の減速傾向が続くのであれば、2020年の見通しは再び下方修正される可能性が高まります。

 IMFはさらに、米中貿易戦争が悪化すれば中国のGDPを2%下押しするとの試算もしています。

「世界貿易はほとんど伸びがみられず、2019年の世界経済は90%近くの国・地域で成長が減速している」と警戒感をにじませ、トランプ米政権が2019年12月に制裁関税を中国からの輸入品ほぼ全てに広げた場合、2018年7月以降の関税引き上げの影響を合算すると、中国のGDPは2020年に2.0%下押しされると試算しています。米GDPも0.6%の下押しとなり、世界全体でも0.8%下振れするとまとめています。

 10月の米中通商協議の部分合意では、対中制裁関税「第1~3弾」の引き上げ(25%→30%)を見送ったものの、第4弾のうち、1,600億ドル分の15%関税上乗せについては、結論は持ち越しとなっています。つまり、IMFの試算では、この持ち越し議題が11月中旬の米中首脳会談までにまとまらなければGDPが2%下押しするということになります。中国のGDPは、6%台から4%台前半に大きく減速するということになります。世界経済は2%台前半に落ち込むことになります。

 仮に、持ち越し議題がまとまっても、過去に引き上げた制裁関税が撤廃されない限り、GDPの下押しへの影響は残ることになります。