株価押し上げの推進力には慎重な見方も

 以上を踏まえると、足元のチャートの形状からは年末株高に向けた期待が大きく膨らみそうな格好になっていますが、その一方で米中協議の一部合意をきっかけとした株価押し上げの「神通力」に対して慎重な見方もあります。

 今回の協議で合意されたのは、中国側が「米国からの農産物(豚肉・大豆など)の輸入拡大」や「知的財産権保護に向けた取り組み」、「為替介入実績など通貨政策の透明化」などを受け入れる代わりに、米国側は「10月15日に発動予定だった対中制裁関税(第1~3弾)の税率引き上げを見送る」というものです。

 米国農産物の購入拡大については中国内で発生した豚コレラの影響という別の理由がある他、知的財産権の保護についても今年3月の全国人民代表大会で既に関連法案を成立させており、特に目新しいものではなく、核心的な部分での合意ではありません。

 そもそも、15日発動の第1~3弾の制裁関税の税率引き上げが見送られても、12月には別の第4弾(2回目)制裁関税が発動されるスケジュールとなっていますので、米中間の協議が継続されてさらに踏み込んだ合意が求められます。あくまでも「一時休戦」と見るのが自然で、結果としてこれまでとあまり状況が変わっていません。

 また、今回の合意文書に署名されるのは来月のAPEC(アジア太平洋経済協力)首脳会合のタイミングとも言われていますので、それまでにネガティブな動きが出てくる可能性も考慮すると、株価はさほど上昇しない可能性があります。今月末が期限とされる英国のEU離脱を巡る動きも不安材料です。