ノーベル化学賞受賞でリチウムイオン電池株を見直す?

 こうした中、スウェーデン王立科学アカデミーは9日、今年の「ノーベル化学賞」を日本の吉野彰氏(旭化成名誉フェロー/名城大学教授)を含む3氏に贈ると発表。

 受賞理由は、3氏が開発に取り組んだリチウムイオン電池が「私たちの生活に革命をもたらした」と評価し、「ワイヤレスで化石燃料のない社会基盤を築き、人類に最大の恩恵を与えた」と称えました。吉野氏は、1972年に旭化成に入社し、長年にわたり電池研究に従事。

 現在のリチウムイオン電池の原型となる二次電池を世界で初めて制作したことで知られ、「リチウムイオン電池の父」と言われています。旭化成はリチウムイオン電池部材のセパレーターでシェア首位となっており、10日に同社株価は約3カ月ぶり高値をつけました。図表3は、「リチウムイオン電池関連銘柄」として知られる主な銘柄を、「時価総額の降順」に示したものです。

図表3:リチウムイオン電池関連銘柄(参考情報)

# 東証 銘柄名 時価
総額
直近
株価
1カ月
前比
配当
利回り
来期
予想
1 6981 村田製作所 38,386 5,680.00 16.7 1.6 17.9
2 6971 京セラ 25,263 6,690.00 0.1 2.1 16.3
3 6752 パナソニック 21,138 861.60 -2.2 3.5 10.1
4 3407 旭化成 15,779 1,125.00 10.9 3.0 10.9
5 6762 TDK 12,804 9,880.00 6.5 1.6 12.9
6 4188 三菱ケミカルホールディングス 11,711 777.50 -3.3 5.1 7.2
7 6674 ジーエス・ユアサ・コーポレーション 1,511 1,827.00 -1.0 2.7 10.7
8 6810 マクセルホールディングス 835 1,566.00 0.6 2.3 15.9
9 4047 関東電化工業 482 838.00 12.5 1.6 8.6
10 4080 田中化学研究所 284 873.00 4.4 0.0 -
    10銘柄の算術平均= 4.5 2.4 12.3
【単位】時価総額:億円 直近株価:円 1か月前比騰落率:% 配当利回り:% 来期予想PER:倍
※上記は参考情報であり個別銘柄を推奨するものではありません。 ※配当利回りは実績(12カ月累計)ベース ※来期予想PER(株価収益率)はBloomberg集計による市場予想平均
出所:Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2019/10/10)

 リチウムイオン電池は、1991年に商用化されて以来、各種電子機器の小型軽量化を実現させてきました。充放電のサイクル寿命が比較的長く、軽くてエネルギー効率が高いことが特徴となっています。同電池は、携帯電話、スマホ、デジタルカメラ、ノート型PC、電動バイクなど小型電子機器の世界的普及に貢献してきたことが知られています。

 また、その用途はEV(電気自動車)など新しい市場に広がり続けています。富士経済(市場調査会社)によると、世界のリチウムイオン電池市場は、2022年に7.4兆円と2017年に比べ2.3倍となる見込みです。今回のノーベル化学賞受賞を契機に、デバイス開発力や応用技術力のあるリチウムイオン電池関連企業が、「世界の電子インフラ」と「クリーンエネルギー」を支える存在としてあらためてクローズアップされる可能性に注目したいと思います。

 

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