ウクライナゲートで追い詰められるトランプ大統領
米国では、ニクソン大統領時の「ウォーターゲート事件」(1972年)に例えた「ウクライナゲート」と呼ばれるスキャンダル(トランプ大統領が民主党大統領候補バイデン氏に関わる調査をウクライナ大統領に依頼した疑い)を発端に、下院民主党が大統領弾劾に向けた調査を始めています。
ワシントン情勢の不確実性が高まるなか、10月1日に発表された9月のISM(米供給管理協会)製造業景気指数は47.8と2009年以降で最低となり、貿易摩擦に起因する製造業活動の縮小が表面化しています。
IMF(国際通貨基金)は同日、「3カ月前よりも大幅な世界景気減速を予想」と述べ、「米中貿易摩擦を巡る不確実性が続くと景気回復は見込みにくい」と憂慮しました。先週末(9月27日)は、「トランプ政権は米国から中国への投資制限に関して複数の選択肢を検討している」と報道されました。
米国に上場されている中国企業のADR(米国預託証券)に上場廃止不安が広がり、中国ADR株価指数は急落しています(図表1)。
米財務省やナバロ大統領補佐官はこうした観測を否定しましたが、様々な強硬策を中国とのディールに役立てたいトランプ政権の思惑や焦りがみてとれます。ダウ平均は5日で3.3%下落し(2日時点)、日経平均の下押し圧力となっています。ワシントン情勢の混迷、景況感の悪化、米中対立の激化は、10月相場の波乱要因として警戒を要します。
図表1:「対中投資制限」観測で米国上場の中国ADR株価は急落