2020年にかけて注目すべき新興国の要件

 図3は、高金利通貨として投資対象の候補になりうる4カ国、ブラジル、南アフリカ、メキシコ、トルコの政策金利の推移です。このうち、ブラジル・レアルは、自国経済のリストラの進捗と国内政局の安定、さらにドル安局面に入れば、底堅さを増す可能性があります。次いで南アフリカ・ランドも候補になりますが、同国の金利の示唆は今一つはっきりしません。

図3:高金利新興国4国の政策金利

出所:Bloomberg Finance L.P.より田中泰輔リサーチ作成

 なお、米国経済の悪化が世界景気をも巻き込む状況で、ドル安が起こるときは、新興国通貨も脆弱化するでしょう。新興国投資の勝算は、米国の利下げでドル安が進む一方、米国も世界も景気は底堅さを保つという要件がそろって成立するものです。

 最近は、トルコとメキシコの金利が、ブラジルや南アフリカより高く、投資家の注目を集めがちです。確かに、トルコの高金利は突出しています。メキシコは、かつてブラジルや南アフリカが注目される場面では地味な投資対象として脇役に置かれていたものが、今や両国を上回る高金利です。しかしそこに、特殊な事情があることが容易に推察できるでしょう。トランプ米大統領に叩かれて苦境に追い込まれていることの表れです。

 そうした背景の高金利ですから、両国通貨は2020年の米大統領選挙に向けて、トランプ再選の可能性に揺さぶられるでしょう。リスク好きな短期トレーダーには魅力的でしょうが、現時点で選挙結果について意味のある予測はできません。中長期投資家は、選挙の行方を見据えつつ、これら通貨を投資対象にできるかを計算していく必要があります。