米中貿易戦争の激化をビジネスチャンスととらえる“ブラジルのトランプ”

 先週、ブラジルの大統領ボルソナロ氏が国連総会で行った演説が話題になりました。

 8月に国際的な問題として大きく報じられた後も、いまだに鎮火が宣言されていない大規模なアマゾンの熱帯雨林のおける森林火災に関連し、ブラジル国内での森林火災は国内問題であり、他国に干渉されるものではない、アマゾンの熱帯雨林を「地球の肺」とする表現は誤りである、などと発言しました。

“ブラジルのトランプ”と呼ばれる同大統領は、地球規模の環境問題に発展しているにも関わらず、これまでも、森林火災について内政不干渉を訴えたり、アマゾンの熱帯雨林は同国経済が発展するための資源だと発言したりしてきました。

 耕作地や放牧地を開墾するために行われる“野焼き”が火災の直接的な原因とされていますが、経済発展を重視するボルソナロ氏が昨年2018年10月に就任して以来、この野焼きが急増しています。

 一部の報道は、“野焼き”の急増は、米中貿易戦争の激化が一因にあげられるとしています。

政治問題を背景に米国産大豆の輸入量を激減させた中国が、ブラジルに代替を求め、ブラジルがさらに中国の大豆消費を満たすべく、耕作地拡大を目的とした野焼きを活発化させたというのです。

 その意味では、ボルソナロ大統領は米中貿易戦争の激化を、中国に対してブラジル産大豆の輸出を拡大できる大きなビジネスチャンスととらえているとみられます。

環境よりも経済、地球全体よりも自国の問題解決を重視する同氏にとって、野焼き→大豆生産拡大→中国向け輸出拡大、という流れは自身の考えに沿ったものといえます。

 現在、同国における野焼きは禁止されています。

 しかし、熱帯雨林にある保護区でさえ経済資源だと発言していた同大統領の下では、野焼きの横行は止むことはないと指摘する声があがっています。

 次より、米中貿易戦争が激化し始めた2018年5月ごろからの、中国における大豆の輸入状況を確認します。