米国の大豆在庫減少のための施策は“農家票”獲得、相場反発の契機にも!?

 上記のとおり、米中貿易戦争の激化の影響で米国の大豆在庫が高水準にあります。米国の農家においては販売が減少し大きな痛手となっています。大豆のみならず、トウモロコシも同様です。

 このような、農家が苦境に立たされそうな状況において、例えば、過剰に積みあがった大豆の在庫を減少させる具体的な施策がなされた場合、農家の心配事は軽減され、引いては来年2020年の米大統領選挙において“農家票”を増やす施策になるとみられます。

 米国における農業は、米国の古き良き伝統的産業です。伝統的産業を味方につけて票を獲得しようとする傾向があるトランプ大統領にとって、2020年11月の選挙に向けて、在庫を削減する具体的な策を施す可能性があります。

 また、今年9月から11月ごろに米国産大豆の収穫が行われますが、米農務省の需給見通しでは、作付面積が減少したことなどを背景に、今年の米国産大豆の生産量は昨年に比べおよそ20%程度減少するとされています(2019年9月時点)。

 今年、米国産大豆の生産量が減少した場合、質の問題はあるものの、在庫を減少させるには追い風といえます。

 以下のように、大豆価格の国際的な指標であるシカゴ先物市場の大豆価格は、足元、1ブッシェル(およそ27 kg)あたり880セント近辺です。これはリーマン・ショック直後の安値水準です。

 2000年代前半より、新興国の台頭による消費急増観測で大きく上昇し、それまでの長期的な価格水準を切り上げました。リーマン・ショックで下落したものの、それ以降、同ショック直後の安値を長期的な底値水準とする状況が現在も続いています。

  

単位:セント/ブッシェル
出所:CME(シカゴ・カーマンタイル取引所)のデータをもとに筆者作成

 目下、米中貿易戦争の協議の中で少しずつではあるものの、中国が米国産の農産物を購入する話も聞こえてきています。また、今年は昨年に比べ、米国における生産量が減少する観測があり、価格は長期的には底値水準にあります。

 このような状況の中、具体的に現在の米国の大豆在庫が減少する施策が行われれば、大豆価格は反発する可能性があると筆者は考えています。

 来年の大統領選挙を念頭におきながら、今後も米中貿易戦争にかかわる要人の発言、今年の米国産大豆生産の状況、そして在庫の状況に注目していきたいと思います。