トランプ大統領の焦りが、対中国協議での融和姿勢につながる?

 9月に入ってから、世界的に株高が進み、日経平均もその流れで大きく上昇しています。9月から「リスクオンの秋」が始まっている感があります。「リスクオン」の流れを生んでいる要因は2つあります。

【1】トランプ大統領が対中国でやや融和姿勢に転じてきている可能性があること  

 中国との交渉で、トランプ米大統領は「突然、強硬姿勢になる」「突然、融和姿勢になる」を何度も繰り返しています。これからも、突然、強硬になるリスクもまだ残っています。それでも、金融市場は「トランプ大統領が対中国で一時的に休戦したがっている」と解釈して動いています。9月はその期待で、世界的に株高が広がり、為替市場で「リスクオンの円安」が進んでいます。米中が一時的に休戦すれば、世界経済に大きなプラス効果となりますが、それを先取りする動きになっています。

 トランプ大統領は2020年に大統領選を控えていますが、支持率低迷にやや焦りを感じている可能性があります。野党・民主党で、富裕層課税などを主張するウォーレン氏(女性)の支持率が上昇、「女性初の大統領候補」として民衆の熱い支持を受け始めていることも、トランプ大統領に逆風です。

 さらに、先週24日、米野党・民主党がウクライナ疑惑【注】をめぐって、トランプ大統領の弾劾に関する調査を正式に開始すると表明したことも、トランプ大統領の焦りにつながっています。実際に弾劾が行われる可能性は現時点で高いとは考えられません。それでも、弾劾の議論が広がること自体が、大統領選にトランプ陣営に不利に働く可能性があります。

【注】ウクライナ疑惑:トランプ大統領が7月、ウクライナのゼレンスキー大統領に対して、野党・民主党のバイデン前副大統領の息子に関する調査を要求したとされる疑惑。バイデン氏は2020年の大統領選をトランプ大統領と争う可能性のある有力候補の1人。事実とすると、トランプ大統領が外国政府の力を借りて、2020年の大統領選挙を有利に進めようとした可能性もある。トランプ大統領には、ロシア疑惑(2016年の大統領選で、ロシアの協力を得て、自身の選挙戦を有利にしようとした疑惑)もある。

【2】2020年にかけて世界景気が回復する可能性も。半導体産業が再びブームに向かう可能性が出てきた  

 米中貿易戦争が一時休戦となれば、米中対立によって人為的に押さえ込まれているハイテク投資(5G・半導体などへの投資)が盛り上がり、2020年にかけて世界景気が回復に向かう期待も出ています。現在、半導体不況の最中ですが、半導体の在庫調整が進む中で需要拡大が続いているため、2020年にブーム復活の可能性も出ています。