5:利害の異なる他人を簡単に信用しない

 これは、投資理論以前の世間常識だと思うのだが、運用会社や年金の世界のコンサルタントを信用し、彼らに依存する年金基金が少なくない。

 たとえば、運用機関の選択をコンサルタントに(実質的に)依存する年金基金が少なくないが、この際に、そもそも「良い運用機関を、事前に選ぶことができるのか」という基本的な問題から注意を逸らして、コンサルタントに仕事を作ってやっているようなケースが少なくない。

 コンサルタントは、自分自身が商売を失わないように、スッキリした結論を顧客には教えずに、あれこれと仕事を作り出す傾向がある。筆者は、先の講演中にふと思いついて「コンサルタントとは、『裸の王様』についたスタイリストのようなものだ」と言ってみたが、我ながら悪くない比喩(ひゆ)のように思う。

 個人投資家が、銀行や証券会社の窓口担当者やセールスマンの言うことを参考に運用商品の購入を決めるのも似たようなものである。よく、雑誌や新聞のマネー運用関係の記事に、「窓口担当者に納得が行くまで話を聞きましょう」と書いてあるが、向こうはセールスのプロなのだから、素人がどのように「納得する」のかは、全く明らかだ。

 お金の世界で性善説に甘えることは危険だと心得たい。

【筆者補足】

 10年前の記事で、ところどころ懐かしいが、資産運用にあって重要なポイントは10年前と変わらないし、年金運用で大事な原則は個人の運用にあっても重要だ。文中、年金基金についた年金運用コンサルタントのことを「裸の王様についたスタイリストのようなものだ」と言っているが、近年の個人をターゲットにする金融機関のセールスマンは「着衣の人を裸にして洋服を売るアパレルの店員のようなものだ」。リテール向けの対面営業は10年前よりも悪くなっているような気がする。気をつけてほしい。(2019年9月18日 山崎元)