1:「事前」の段階でベストの選択をする
運用は最終的によい「結果」を求めて行う作業ではあるが、運用者に求められるのは、その時々に、利用可能な資源を使って、ベストのポートフォリオを作ることだ。
結果として残った運用成績でパフォーマンス評価をすることは重要だが、パフォーマンス評価自体は、運用市場の環境や運用スキルが一定の安定性を持っていると仮定して、運用者が事前のベストを構築する能力をデータから推定する作業にすぎない。
ところで、年金運用の世界は口ではしばしば「長期運用」といいながらも、「短期」で「短気」に物事が決まる世界だ。
内外共に、運用会社の運用能力を評価するのに3年程度の期間で行うことが一般的だが、上記で挙げたようなパフォーマンス評価に好都合な仮定を前提とするとしても、3年では全く不十分だ(5年でも同様)。
しかし、年金基金は、たとえば雇った運用会社のパフォーマンスが悪いと、2年、3年で解約することが珍しくない。
これは、はっきり言うと、年金基金が、運用そのものを改善する目的よりも、運用の責任をなにがしか移転する目的で運用会社を使っているからに他ならない。これは、年金運用そのものの趣旨にはかなっていないが、基金の担当者の行動としては経済合理的だ。