公的年金をベースに自助努力の老後資産形成は考えることが大事

 上記のモデル年金額を見れば分かるとおり、老齢基礎年金額だけでは老後は暮らしていけません。夫が働き、妻は専業主婦の場合のように「夫婦で基礎年金二つ+厚生年金一つ(年265.5万円)」は欲しいところですし、できれば共働きをして、厚生年金も二つもらいたいところです(年375.2万円)。

 ここでいう数字は標準的な厚生年金額ですから、人より稼いで、人より多く保険料を納めた人は厚生年金額も高めになります。しっかり仕事をすることは、税金も年金保険料も引かれますが、究極的には老後の経済的余裕を作ることになるのです。

 そして、iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)や、つみたてNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)の口座を開設して自助努力をしたり、退職金・企業年金をもらえば、かなり余裕が生まれる老後となります。iDeCoやつみたてNISAを始めることがきっかけで、老後のための計画を現実的に考えることができるでしょう。

 また、ライフスタイルによっては自助努力の重要性はより高まります。

 たとえば「おひとりさまで基礎年金一つ+厚生年金一つ(年187.6万円)」の場合、真剣に老後資産形成を考えておいたほうがいいことが分かります。これは年金制度の問題ではありません。おひとりさまで暮らすということは「ひとり分の年金」で老後を過ごすということだからです。

 独身の正社員の場合、40~50代で散財していることがありますが、ライフスタイルを改善して、ガッツリ老後のために資産形成をしておくことをオススメします。

 以前、退職金・企業年金を知らずに「老後に2,000万円」を考えるのはおかしいとコラムを書きましたが、公的年金がどれくらいになるのかを知らないのもまたナンセンスです。

 財政検証のニュースを見ていると、「そもそも知っておきたい年金知識」がブレていることで、不要な不安になっているように思います。

 知識不足で不安だけ抱えている人ほど、あやしい金融商品にだまされて最悪の場合お金を増やすどころかなくすことになってしまいます。

 皆さんは投資を行い、将来の経済的余裕を作っていくにあたって、ぜひ公的年金について「適切な理解」をもっていただければと思います。