タイフーン、ハリケーン、サイクロン、いずれも勢力を強めた熱帯暴風雨。違いは現在地

 タイフーンとハリケーン、サイクロンは、いずれも発達して勢力を強めた熱帯暴風雨のことです。また、熱帯暴風雨は熱帯低気圧が発達したものです。発達段階は、熱帯低気圧→熱帯暴風雨→発達した熱帯暴風雨(タイフーンなど)、の順です。

 熱帯低気圧は、温められた海水が水蒸気になり、上昇気流が生まれることで発生します。このため、赤道付近の海水温度がおおむね26度以上の地域で発生する傾向があります。

 自転する地球上では緯度の差によって運動方向に変化が生じるため(コリオリの法則)、北半球の熱帯低気圧は左回り(反時計回り)で北東方向へ、南半球の熱帯低気圧は右回り(時計回り)となり南東方向へ向かいます。

 コリオリの法則が発生しない(緯度に差がない)赤道付近では熱帯低気圧は発生せず、また、北半球で発生した熱帯低気圧が南半球に移動することはありません(逆もしかり)。

 風速と勢力の関係は、北西太平洋・北大西洋など、地域ごとの観測を担当する機関によって若干異なりますが、おおむね秒速15メートル未満が熱帯低気圧、同15~30メートル程度が熱帯暴風雨、同30メートル程度以上が発達した熱帯暴風雨とされています(いずれも10分間平均最大風速 以下同様)。

 熱帯低気圧が発達し、発達した熱帯暴風雨になった際、タイフーン、ハリケーン、サイクロンのいずれかに格上げされますが、名前が異なるのは、その発達した熱帯暴風雨がどの地域にあるのかによって変わるためです。

図:発達した熱帯暴風雨の地域別の名称

出所:各種資料をもとに筆者作成

 台風は、気象庁などが定義する、北西太平洋または南シナ海にある熱帯低気圧のうち、最大風速が秒速およそ17メートル以上に発達した熱帯暴風雨のことです。“台風の卵”とは、台風に発達しそうな(熱帯暴風になりそうな)熱帯低気圧、と言えます。

 同じ地域を管轄する米軍の機関である合同台風警報センターの機関の基準では、(台風が)風速29メートル以上となればタイフーンになります。

 北西大西洋、北東太平洋では、風速29メートル以上でハリケーン(米国立ハリケーンセンターの基準)、南太平洋、南北インド洋では、風速33メートル以上でサイクロン(India Meteorological Departmentの基準)になります。

図:発達した熱帯暴風雨の名前と地域、および風速の関係

※風速は10分間の平均
出所:各種資料をもとに筆者作成

 日本では、国土交通省の外局である気象庁が台風や熱帯低気圧の情報を、随時ウェブサイト、あるいは状況に応じて会見で発表することがあります。また、ハリケーンやタイフーンの観測を幅広く行う米国の機関(米軍に関連する機関であることが多い)は、これらの詳細な状況や今後の見通しを数時間おきにウェブサイトで公表しています。

 発達した熱帯暴風雨によって該当する地域では、これまで何度も甚大な被害を受けてきました。これに対し、日夜、関連機関は気象観測技術を進歩させ、より高頻度で、正確な現状を示す情報を、さらには確度の高い予測を公表しています。

 過去に比べて、わたしたちは、年々発達する技術によって生み出される有益な情報をいつでも入手できる状況にあります。また、それらを“減災”に役立てることができる環境にあると言えます。