(7)豪ドルやNZドルが低金利の仲間入り

 豪州、ニュージーランド(NZ)は経常赤字を続ける借金国です。加えて、豪州は鉱物資源、NZは酪農品を主力輸出品とし、変動の大きい商品相場に、為替レートが振られがちです。このため豪ドルもNZドルも、1990年代までは値動きの激しい高金利通貨として、新興国通貨と同列に扱われたものです。

 そして、2000年代に入り、ドルに肩を並べるユーロの誕生で国際分散投資の有効性が広く認知されると、両通貨は先進国の高金利通貨として組み込まれるようになりました。

 2013年に両通貨は下落に転じました(図2)が、両国資産への資金流入は続き、過度の資金繰りの悪化は見られませんでした。おかげで、両国中央銀行は利下げを進め、国内不動産の活況など、内需をサポートできたのです。

 しかし、今や豪州とNZが低金利国の仲間入りです。当面、主要輸出先の中米の景気動向、そして米国との金利格差をにらんで、両通貨は折々に圧迫されそうです。相場回復の条件は、前段(6)の高金利新興国と同様、米中を軸に世界需要が底堅く、だぶつき気味のドルが商品相場に流入することと考えられます。

ドル/円は最も明快なサイクル指標

 以上7つの現象をつなげて理解すると、グローバル投資のサイクルを思い描きやすくなるでしょう。この中で、ドル/円が最も明快な内外景気サイクル指標になっています。

 米中の貿易摩擦や景気の不透明感は簡単には拭えないでしょう。リスクオフ下では、円高が日本の景気悪化と株安の悪循環を招くという恐怖心が蔓延(まんえん)しがちです。

 しかし、円という自国通貨にこれほど明確な性質があることを幸いと考えて、逆手に取れば良いだけのこと。2018年以降のように、日米景気に終盤の兆候が現れたら、株式や外国証券などリスク資産の保有を減らす、次に高利回りの内外資産の選別買いを検討し、さらに来る円高・株安後の買い場を楽しみに待つだけのルールです。

 相場に頭を悩ませない「長期+分散+積み立て」投資から一歩踏み出して、自分の頭で考えるDIY(Do It Yourself)投資の勝機を楽しみたい方には、ドル/円相場という明快な指針が大いに助けとなるでしょう。

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