(4)中国の人民元の下落は両刃の剣

 米国が対米輸出3,000億ドルに追加関税10%を課すなら、中国当局が人民元の基準値を対ドル7.3元程度、25%なら7元台後半に引き下げれば、輸出への悪影響を相殺できます。最近のドル/人民元の7元台乗せは中国当局の意図があってのことと判断されます(図1)。

 一方、人民元安にはマイナス作用もあります。

 第1に、米国は中国当局の為替操作を非難しています。人民元安が進むほど、市場は米中摩擦と世界経済の先行き不安を強めるでしょう。

 第2に、中国マネーの国外流出が、人民元相場の管理を難しくするリスクです。最近までの資本規制の強化によって、今回はなんとか為替管理できると、私は見ています。しかし、この内なる資本流出マグマの圧力が、この先も長く米国に突かれる弱点の一つとなるでしょう。

(5)借金国、韓国のウォンは脆さを露呈

 韓国ウォンは、リスクオフの状況下に借金国通貨ゆえの脆(もろ)さを露呈しています。

 韓国は1997年にアジア通貨危機に巻き込まれて破綻しました。その後はウォン安が輸出を助け、電機、鉄鋼、造船、自動車など、日本の牙城に切り込みながら、貿易黒字、経常黒字を定着させてきました。その結果、近年のウォンは、経常黒字を累積する円と同様に、リスクオンで安く、リスクオフで強まる性質を見せ始めました。

 しかし、米中経済への懸念、日韓対立とリスクオフ要因が重なると、まだネットでは借金ポジションが大きい国としての弱さが出て、ウォンは急落。8月には対ドルで円高、ウォン安と、かつてのように真逆に動意付いています(図1)。

 さらに、韓国がまた金融危機に陥るリスクも完全には排除できません。一方で、リスクオフで円高になる日本と異なり、韓国はウォン安が輸出支援となることを、次の回復ステップとして注目する必要があります。ただし、輸出の主要なライバルは、日本以上に、人民元安の中国に移っています。