8月に注目したい新興株の動き

 また始まった“米中貿易戦争”、これで第何ラウンドなんでしょうか…。月初に突然、トランプ米大統領がツイッターで米中関税第4弾(9月1日から3,000億ドル規模の中国製品に対して10%の関税を課す)発動の方針を表明。毎度トランプのツイッターがゴングを鳴らし、世界同時株安モードに入ります。そして、米中摩擦の激化で先進国屈指の下落率で反応する日本株市場…ちょうど3カ月前、5月の株安時の再現のような8月相場がスタートしました。

(毎月、同じようなことを書いている気がしますが)8月も、新興株で「株価が下がっているから」という理由で逆張り買いを入れてというように、無駄にリスクを取るのは控えたほうがいいでしょう。理由は3点。

 1つ目は、「この手の世界同時リスクオフ局面にあって、日本の新興株は激弱」だから。米中摩擦と関係のない企業ばかり上場している市場ですが、度合いの強いリスクオフ局面で、投資家が一番重視するのは“安全性”(ボラティリティが低い、流動性が高い、業績が安定、など)。流動性の低いグロース株の塊であるマザーズ市場は、より優先度が低い保有対象になります。

 2つ目は、「マザーズ指数の見た目からは分からない、異常な割高感」。1年前の8月1日における東証マザーズ指数の終値は1,032ポイント。今年の8月1日は905ポイントですので、チャートを見ていると値ごろ感アリということになります。ただ、東証マザーズ指数の予想PER(株価収益率)は、1年前の78倍に対して今が173倍。ミクシィやMTG、メルカリなどがマザーズ市場全体の大幅減益要因となり、指数の見た目以上に中身は超割高化しているわけです。

 超割高だろうが、その株に上昇の勢いがあれば「この株は利益の伸び率が凄いから」「サブスクリプション関連株だから」といった適当な理由を付けて株価が上がるものです。ただ、この勢いも1度の四半期決算でぶち壊されるのも新興株によくあること。先月でいえば、チームスピリット(4397)、RPA(6572)などが典型例でしょう。この8月も、9日にAI関連のPKSHAやKudan、JIG-SAWなどの決算発表が控えるなど、月前半が決算発表シーズンです。買われてきた高PER株は要注意。

 そして3つ目は、「8月はパフォーマンスが悪いという季節性がある」ためです。過去10年(2009年~2018年)で調べても、月別パフォーマンスで12カ月中最悪なのが8月です。東証マザーズ指数でいえば、8月の月間騰落率平均は▲4.4%。次に悪い10月の▲1.5%を大きく凌ぐパフォーマンスの悪さです。

 また、日経ジャスダック平均は過去10年の月別パフォーマンスで12カ月中11カ月が上昇。安定して上がっている指数ですが、唯一月間でマイナスなのが8月の同▲1.0%。あくまで過去実績に過ぎませんが、分が悪い月ではあるわけです。

「休むも相場なり」が格言的にはピッタリなんですが…日本の新興株、いつまで休んでればいいの? というくらい、地合い環境を好転させそうなきっかけが生まれてきません。こんな状態で、豊かな老後のために上手く運用しよう!というのは無理筋かもしれないですね。