永らえる米景気サイクル

 米国では現在、2018年に急落した株価が高値を更新しています。この動向には、慎重さと持ち直しの兆しが混ざっています。しかし、2018年から低迷していた住宅や企業景況感は、数カ月後にはリバウンドを見込んでいます。

 2018年第4四半期の米株安を受け、FRB(米連邦制度準備理事会)はそれまでの利上げステップを止め、利下げ方向に舵を切りました。住宅部門は、2018年米長期金利が3%を超えた辺りで一時失速したものの、利下げ期待で2%水準に下がると、住宅ローン申請が増加しました。

 一方の企業景況感は、2018年の米中貿易摩擦と米株安に直撃され、低迷気味です。この米株安への配慮から、トランプ政権が対中姿勢を緩め、利下げ期待で株価が反発。2019年は企業心理も持ち直す余地があります。

 ところが、5月にされた政府の対中追加関税表明は、企業心理にまたショックを与えました。しかしこのことは逆に、2020年11月の米大統領選挙に向けて、トランプ政権は対中姿勢の緩急を調整することで、景況、市況を支えられることをうかがわせます。

 景気終盤に至ってもなお低インフレ環境にあること、FRB(米連邦準備制度理事会)が追加利下げ可能なことと相まって、米景気、株価は2020年後半まで底堅さを持続する目が出ています。

リスク・バランスは下方に広い

 しかし、米景気の拡大サイクルが永らえるにしても、新たな拡大サイクルがスタートするとは考えにくいステージです。米労働市場はほぼ完全雇用に達しており、伸び代が限られます。終盤がどう永らえるかの問題です。

 もし今後半年~1年、景況、市況がしっかりなら、利下げ期待は消え、利上げ機運の再燃が株価の上値を叩くでしょう。

 一方、利下げにもかかわらず、景気終盤らしく、多くの経済指標が伸び悩んで自然とダレてくれば、景況感が悪化し、株価も重くなるでしょう。

 米株式市場は、上昇トレンドの調整圧力が2018年の急落によっていったんガス抜きされた面があります。その後、各株価指数が高値更新されるまで回復しており、いずれまた下げ相場になっても、ヘッド&ショルダーズ(三山)をテクニカルに形成する程度の猶予はあるのではとみています。

 ドル/円は、米景気が底堅さを保ちつつも、利上げ観測が再浮上しない「適温」状態にあれば、110円付近にとどまれるでしょう。しかし、景気の伸び代が限られるのと同様に、110円超を上伸するのは難しく、100円側に値幅余地があると判断しています。