短期の判断の積み重ねが「長期投資」

 冒頭にあげた3年と30年の例で、再び考えてみよう。

 例えば、向こう3年を想定してポートフォリオを組んで、3年経った時点で、次の3年を想定してポートフォリオを調節すると想像してみよう。

 多少のバランスの調整は必要かもしれない。しかし、これに加えて、例えば、株式の組み入れ率を大きく動かすべきだと考えるような状況の変化・情報・判断といったものを、新たにその時点で持っているかどうかが問題だが、重大な与件の変化はない場合が多いのではないかと予想される。

「市場の効率性」を盲信するのはいかがかとも思うが、例えば、市場がおおむね効率的であると考えるなら、今の株価も、3年後の株価も、その時の情報と適正なリスクプレミアムを織り込んで形成されているのだろうと考えると、投資家の側でリスクに対する態度が変わったのでない限り、ポートフォリオに大きな調整は必要ない。

 端的に言うなら、短期の判断の積み重ねの結果、長期的にポートフォリオがゆっくりと動いた結果、あたかも最初から長期を想定してポートフォリオを作ったかのような、典型的に「長期投資」という言葉でイメージされるような運用が出来上がる、というのが現実なのだ。

 短期投資の積み重ねの結果が長期投資だった。考えてみると、普通の話だ。長期投資は特別ではない。